【成功は自分のおかげ、失敗は他人のせい】「自己奉仕バイアス」が強すぎると、自分を客観視できなくなる。実験が示す「人間の性質」とは

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1979年のロスらの研究では、2人組での作業の成果についての責任を聞いたところ、成功については自分の貢献を過大評価する傾向が認められ、失敗については他者や外部要因のせいだと強調する傾向が見られています。

ワイナーの「原因帰属理論」

自己奉仕バイアスの背景には心理学の動機づけに関わる原因帰属理論があります。私たちは意識するにしろ、しないにしろ、常に問題の原因を何かに帰属させる方向へと思考や心理を働かせています。人は、何か起きたことを「〜のせい」と原因を探したがる傾向があります。

米国の心理学者のバーナード・ワイナーが人が出来事や自分や他人の行動の原因をどう考えているのかを分類したのが原因帰属理論です。

ワイナーは、成功や失敗の原因を何に帰属させるのか(何のせいにするのか)を、統制(内的・外的)×安定性(安定・不安定)の、4つの要因に分けて分析しました。その要因とは(1)「能力」(2)「努力」(3)課題の「難易度」(4)「運」です。

達成動機、成功への意欲が強い人は、成功したとき、その理由を、自分の努力の賜物と考え、失敗したときは、その逆に、努力不足が原因だと考える傾向がありました。一方で、達成動機が低い人は、成功しても、その原因を特定せずに運まかせのような外的要因のおかげと考え、失敗すると、自分の能力不足を理由にする傾向が見られました。

つまり、成功への意欲が足りない人は、失敗の原因を、やる気さえあれば誰にでも取り組める努力の問題と考えません。どうにもならない能力の問題と考えることで、努力しなければいけないというプレッシャーを打ち消そうとするともいえます。

また、達成動機が強い人は、成功率50%程度のチャレンジを好み、達成動機が低い人は、成功率が50%よりもかなり高いか、逆にかなり低いチャレンジを好む傾向があることもわかりました。

達成動機が強い人は、実力に見合った課題を選び、運に頼らず成功を求めます。それに対して、達成動機が低い人は、実力に見合った課題だと、失敗したときに自分の責任や努力不足を問われかねないので、とても簡単な課題か、逆に難しい課題に挑む傾向があったのです。

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