【成功は自分のおかげ、失敗は他人のせい】「自己奉仕バイアス」が強すぎると、自分を客観視できなくなる。実験が示す「人間の性質」とは
人間は過去の出来事や感情、信念を現在の自分の視点に合わせて無意識にゆがめて記憶する傾向があります。自分の過去の態度や行動が、現在の信念や行動と一貫していると錯覚もしてしまいます。一貫性バイアスが働くと、自己認識や意思決定、他人とのコミュニケーションにゆがみが生じがちです。コミュニケーションについては、ハロー効果などにも関係しています。
42のイベントと「楽観バイアス」
楽観バイアスは自分にとって良いことが起こる確率を過大評価し、悪いことが起こる確率を過小評価する心理的傾向です。このバイアスの先駆けになったワインスタインの研究があります。
大学生を対象にした実験で、人生で遭遇する可能性のある42のイベントのそれぞれについて、自分に起こる可能性が同級生に起こる可能性と比べて高いと思うか低いと思うかを回答してもらいました。
42のイベントのうち18は「卒業後に就いた仕事が気に入る」「持ち家を手に入れる」「ヨーロッパ旅行をする」「80歳を超えて生きる」などポジティブなイベントです。
残り24は「飲酒の問題を抱える」「自殺を図る」「結婚して数年以内に離婚する」などネガティブなイベントです。
回答結果は、ポジティブなイベントが自分に起こる可能性は平均確率よりも高く見積もられ、ネガティブなイベントが自分に起こる可能性は平均確率よりも低く見積もられていました。
人は根拠がないにもかかわらず、自分と同じような属性(性別、年代など)を持った他者よりも自分が不幸な出来事に遭遇する可能性が低いと考える傾向がそもそもあるのです。
楽観バイアスが健康に及ぼす影響を調べた調査もあります。自分の健康状態に対する評価を調査したところ、楽観的な人々の方が精神的にも身体的にも健康状態が良好であることがわかりました。楽観バイアスのプラスの側面が大きい結果を示した実験になっています。
とはいえ、常に楽観的であればいいわけではありません。注意も必要です。たとえば、企業経営者が自社の業績に対して楽観バイアスに陥ってしまうと、適切な対応を取るのが遅れ、経営が傾く可能性もあるでしょう。
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