家庭で孤立気味の父親が、息子に「信用してくれて嬉しかった」と言われるまで 小言癖の父をを変えた"叱らない"サッカークラブの教え

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神奈川県にある伊勢原FCフォレストは、子どもを一切叱らず「自分で考えて行動する子どもを育てること」を目指しています(筆者撮影)
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神奈川県に「伊勢原FCフォレスト(以下フォレスト)」という、子どもを一切叱らないサッカークラブがある。チームの目標は勝敗よりも、「自分で考えて行動できる子どもを育てること」。

コーチは子どもにプレーの意図を質問するだけで、あとは本人に考えさせる。やがて親たちも子どもを叱ることが減り、家庭でも子どもを黙って見守れるようになるという。フォレストに子どもを通わせながら、「自分をホメる」練習をきっかけに、家庭でも職場でも成長していった父親(53歳)の軌跡を紹介する。

父親がひどく傷ついた三男の一言

「お父さん、帰ってこなくてもいいのに……」

長い出張から帰宅した迎哲生(むかえ・てつお)さん(当時47歳)は、小学3年生だった三男の一言にひどく傷ついた。仕事が忙しく、地方出張も多くて、3人の子どもたちと過ごす時間もなかった約6年前の話だ。

「あの頃は公私共に余裕がなく、自己肯定感も低かったですね。自宅にいても子どもたちに『部屋が汚い』とか、『宿題しろ』とか、つい小言ばかり口にしていました。ですから、かわいい盛りの三男のあの一言は堪えました。家族のために頑張っているのに、おれは子どもに嫌われているんだって」

迎哲生さん(筆者撮影)

そう話す哲生さんも両親から叱られて育ったし、躾とはそういうものだと漠然と考えていた分、現実とのギャップに途方に暮れた。

三男は3年生からフォレストの練習に通っていて、哲生さんは妻の美佐子さん(51)と、週末に練習試合を見に行った。

試合が始まると熱くなり、「攻めろ」とか、「(シュートを)打て!」と声を上げると、妻から耳元で注意された。フォレストでは試合観戦時にそういう声がけは禁止されていたからだ。他にも相手チームの良いプレーには拍手を送るというルールがあった。

「親が試合中にそんな声がけをすると、子どもは親の目を気にしてのびのびとプレーができなくなるためでした」(哲生さん)

しかもフォレストが目指す、「自分で考えて行動する子どもを育てること」とも正反対だ。哲生さんには最初のカルチャーショックだった。

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