家庭で孤立気味の父親が、息子に「信用してくれて嬉しかった」と言われるまで 小言癖の父をを変えた"叱らない"サッカークラブの教え

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三男が4年生に進級した翌2020年春、哲生さんは美佐子さんの勧めで、フォレスト主催(当時)のオンライン「子育て講座」への参加を決めた。美佐子さんは2019年のクラブ発足当初から同講座で学んでいた。

哲生さんは自分の小言グセのせいでギクシャクしていた、子どもたちとの関係を改善したかったからだ。講座ではまず自分、次に妻、最後に子どもの順でひと月ずつ、それぞれをホメる練習を3カ月間続けた。

自分をホメる機会なんてなかった

その原点には、フォレストが練習終わりに行う「いいとこメガネ」という慣習がある。その日の練習で子どもたちが自分や仲間のよかった点を発表して、みんなで拍手し合うのだ。自分や仲間のプレーへの観察力を養い、自分なりに考えて人前で意見を伝える練習にもなる。

哲生さんが取り組んだ自分や妻、子どもをホメる練習とは、「いいとこメガネ」の大人版とも言える。彼は当時をこう振り返った。

「自分をホメることなんて一切なかったので、最初は全然思いつきませんでした。仕方がないので『朝きちんと起きられた』とか、『朝ごはんをちゃんと食べてから仕事に行けた』というレベルから始めました」

哲生さんはLINEの子育て講座のグループチャットに少しずつ書いていった。

「自分ホメ」は難しかったという(筆者撮影)

月1回、20人弱が参加する講座だったが、とにかく毎日意識して続けていると変化が少しずつ生まれてきた。以前は妻から言われて嫌々やっていた風呂掃除や庭の除草を、好きな音楽を流しながら自発的に取り組んだり、出勤する妻に照れずに「行ってらっしゃい」と言ったりした。

自分をホメる練習で苦労した分、ホメる勘所がわかってきて、翌月の妻や、3カ月目の子どもをホメることは意外とできましたと哲生さんは話す。

美佐子さんへのホメでは「今日も朝早くから大量の洗濯と、子どもたちの弁当作りをありがとう」とか、「出張に出かける際に『気をつけて』と言葉をかけてくれた」と書いた。子どもホメなら、「出張先から自宅に電話すると、長男が常に最初に、しかも元気のいい声で出てくれて嬉しい」といった感じだ。

哲生さんの美佐子さんホメと自分ホメ(筆者撮影)

哲生さんの一連のLINEを見て、講座を一緒に受けている母親から、「些細ななことでも、ありがとうの言葉って本当に嬉しいんですよね。私も主人のその一言だけで本当に癒やされます」というメッセージが送られてきた。

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