
筆者はこれまで5万人以上の子どもたちや保護者の方々と関わってきましたが、子育ての現場で最もよく耳にする言葉の一つが「早くしなさい」です。多くの家庭の朝は、「早くしなさい」が連呼されているのではないかと推測します。朝の準備、食事の時間、外出の準備など、忙しい毎日の中でつい口をついて出てしまうこの言葉。しかし残念なことに、この「早くしなさい」が効果を発揮したという話を、筆者は一度も聞いたことがありません。
それにもかかわらず、多くの親御さんが毎日のようにこの言葉を使い続けています。なぜこのようなことになるのでしょうか。もちろん、それ以外の方法が見つからないからというのが理由だと思いますが、果たして他に方法はないものでしょうか。
そこで、山川さんには、少しだけ言葉を変えることで子どもの行動が変わる、そんな魔法のような方法を今回はお伝えしたいと思います。
「早く」という言葉が生み出す見えない問題
「早く来なさい」「早くしなさい」という言葉は一見シンプルな指示に思えますが、子どもの心理に与える影響は複雑です。心理学の研究では、命令的な言葉かけは子どもの自律性を阻害し、内発的動機を低下させると言われています。筆者がこれまで直接指導してきた4500人以上の子どもたちを観察していると、「早く」という言葉を頻繁に聞く子どもほど、以下のような特徴が見られました。
・親の指示なしには行動しにくくなる
・反発心から意図的に行動を遅らせる
・自分で考える習慣が身につかない
大人から子どもへの言葉の影響は、私たちが思っている以上に大きいものです。特に両親からの言葉の影響は大きく、何気なくかけた言葉が子どものやる気を出させたり、反対にモチベーションを下げたりすることはよく知られています。
子どもには大人以上に「自分で決めたい」「自分でやりたい」という強い欲求があります。これは心理学でいう「自律性への欲求」で、人間の基本的な心理的ニーズの1つです。この欲求を無視した言葉かけは、表面的には従順に見えても、内面では抵抗感や無力感を育ててしまうのです。
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