映画「ファーストキス」のセリフが観客に刺さる訳 「坂元パンチライン」に全身を委ねる幸福

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(写真:映画『ファーストキス 1ST KISS』公式サイト)

映画『ファーストキス 1ST KISS』のスタッフは、今の映画界屈指の組み合わせと言えるだろう。

まず脚本は坂元裕二。さすがにもう『東京ラブストーリー』(1991年)の、という紹介は似つかわしくない。カンヌ国際映画祭・脚本賞を受賞し、この連載でも取り上げた傑作映画『怪物』(2023年) を書いた人で、テレビドラマではフジテレビ『最高の離婚』(2013年)、TBS『カルテット』(2017年)、フジテレビ『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)などを手掛けた、あの坂元裕二である。

そして監督は塚原あゆ子。昨年の話題作である映画『ラストマイル』『グランメゾン・パリ』の監督であり、テレビでも昨年のTBS『海に眠るダイヤモンド』の演出を手掛けているのだから、今乗りに乗っている監督の1人と言っていい。

その他にも、企画・プロデュースの山田兼司は『怪物』、そしてアカデミー賞視覚効果賞に輝く『ゴジラ-1.0』(2023年)を手掛けた人で、音楽は、これもこの連載で取り上げた『竜とそばかすの姫』(2021年) のあの圧倒的な音像を作り上げた岩崎太整と、まさに圧倒的な陣容だ。

滑り出しも好調で、興行通信社による週間映画ランキング(2月7日~2月13日)では、2位の『野生の島のロズ』、3位の『366日』をおさえて首位を獲得。公開後すぐに私も観たのだが、興行成績の今後の伸びも、大いに期待ができると見た。

というわけで今回は、この映画『ファーストキス』の魅力と、そんな魅力の背景にある時代との関係を探ってみたいと思う。

主役・松たか子の存在感

第一の魅力は、まずは主役を張っている松たか子の魅力である。

この映画における松たか子、ひいてはテレビドラマでは、『大豆田とわ子と三人の元夫』や、この正月にオンエアされたTBS『スロウトレイン』などにおける彼女の存在感は、もう「女優」(最近流行らない言葉だが)というよりも「職業=松たか子」とでも言いたくなる、独自の存在感を示している。

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