私たちの脳は、生物進化の歴史を映し出す3層構造をしています。最も基礎となる部分は生存本能を司り、爬虫類と同じような機能を持つことから「ワニ脳」と呼ばれます。その上には感情を扱う「サル脳」、さらには人類特有の論理的思考を可能にする「ヒト脳」が重なっています。
この3つの層は、ときに予想外の反応を引き起こします。たとえば会議やプレゼンテーションの場で、話の内容が論理的で筋が通っているのに、なぜか聴衆の心に響かないことがあります。これは、非言語コミュニケーションの力が、言葉の力をはるかに上回るからです。
ワニ脳を活性化させずに、トゲなく人を動かす他者と生きる術に迫った『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』より一部抜粋、再構成してお届けします。
自信のなさそうな話し手を信用するか
数年前、私はある企業の社内説明会に立ち会った。それは、経営陣が大規模な改革について説明する会だった。聴衆はみんな、気が進まないような顔で経営陣の話を聞いていた。
こうした話の場合、伝える側はかなりのストレスを感じる。メッセージをうまく伝えるには、あらゆるコミュニケーション手段を使わなければならない。
経営陣は、ボディランゲージも使っていた。ところが、動きが硬すぎたり、背中を丸めて自分を小さく見せてしまっていたり、プレゼンのスライドやプリントしか見ていなかったり、というありさまだった。
困ったことに、そうした態度のせいで、聴衆の賛同はまったく得られなかった。改革の説明は筋が通っていたにもかかわらず、話し手からは少しも自信が感じられなかった。話し手が自信なさそうに見えたら、聴衆はその話を信用するだろうか?
あなたが誰かと話しているとき、相手のワニ脳とサル脳は、あなたのボディランゲージや声のトーンを電光石火のごとくスキャンして、あなたの発言がそれと一致しているかチェックする。
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