2025年の通信業界を占う「楽天モバイル」の動向 大躍進の勢いは続くか、真価が問われる1年に

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ところが、11月の決算発表時に、楽天は突如、強引ともいえるやり方でARPUを引き上げた。通信利用料などに限定していたARPUの定義を変更し、楽天モバイルを使うことでEC(ネット通販)やカードなどグループ内の他サービス利用につながったとする「売り上げアップリフト効果」も加えたのだ。

その結果、「新ARPU」は、約2800円まで上昇。2024年10~12月期での「単月黒字化達成」の公算が、一気に高まった。

ARPUの見直し自体は、モバイルを軸にした非通信事業拡大を重視する最近の業界動向に沿うものだ。ただ、その先のさらなる成長に向けては不透明感も漂うことになった。今後、純粋なARPUの上昇が期待しづらいことが改めて明らかになったといえるからだ。

官製値下げ以降、携帯電話料金は低水準で推移し、値上げには容易に踏み切れない状況が続く。楽天は定額でデータを無制限に使えるプランを展開しているが、ユーザーのデータ利用量が急増していても価格の改定は難しい情勢だ。

個人向け通信市場が飽和する中、今後も急激な契約拡大を維持し続けるのも険しい道となりそうだ。

正念場は今後も続く

楽天は販促に向けた「新たな武器」として、つながりやすい電波の「プラチナバンド」を6月から鳴り物入りで展開している。ただ、業界内では「投資が少なすぎる」との声が多く、実際の品質面での訴求はしばらく限定的とみられる。

もっとも、モバイル事業の展開に当たり、多額の資金調達を重ねた楽天にとって、正念場は今後も続く。2024年は、通信設備などを売却して借り直す「セール・アンド・リースバック」取引で1700億円の調達を決めた。身を削るように財務の立て直しを進めているだけに、モバイルの成長にブレーキをかけられない局面に立っている。

2025年にキャリア事業に本格参入して5年を迎える楽天。前年の勢いを持続できるのか、存在感を増す「第4のキャリア」の真価が問われる1年になる。

茶山 瞭 東洋経済 記者

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ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、通信業界とITベンダー業界を中心に取材。メディア、都市といったテーマにも関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んだ。

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