豪雨からウイーンを守った治水システムの「凄さ」 欧州第二の大河はなぜ洪水を起こさなかったか

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雨はさらに24時間以上降り続くと予報が出ている。翌日はどこまで水位が上がるのか。自宅にある地下への浸水を覚悟し、地下室から上階にものを運び上げ、停電や断水に備える。

ドナウ川と共に生きて50年という、付近に住む人に話を聞いた。

「ドナウ川があふれると、まずは水門を開放するだろ、それから川沿いのサイクリング道が浸水する。今はこの段階だ。そこから一段高い高速道路が浸水するまでは、まだ慌てなくて大丈夫」

堤防のおかげで決壊はしていないが、よく見るとドナウ川の水位は高速道路より高くなっていた。住民はインフラの安全を信じているのだ。

日常を取り戻すドナウ川

雨が4日連続で降り続いた翌日の17日の朝、前日とは一転して青空が見え、日が差したときには、不思議な気分だった。大半の予想に反して、ドナウ川どころか、あれほど氾濫寸前だった市街地のドナウ運河やウィーン川も洪水を起こさず、大災害には発展しなかった。

ドナウ川の水位は3日かけてゆっくりと下がった。ノイエドナウの水門が閉じられ、再び遊水池に戻った。濁流は穏やかな水面に戻り、茶色い水は青空を映している。

水没していた川沿いの散歩道が再び姿を見せ、水鳥が餌をついばんでいる。サイクリング道に残った大量の泥をショベルカーで集めてトラックで運び出す作業が急ピッチで進み、テラスカフェの従業員が営業再開に向けて準備していた。

砂泥を集め、川岸が整備されていく。前日までここはすべて水の下だった(写真:筆者撮影)
テラスカフェもイスとテーブルが並べられている。増水時の写真の青い看板と比較すると、2m近く水位が下がった(写真:筆者撮影)
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