豪雨からウイーンを守った治水システムの「凄さ」 欧州第二の大河はなぜ洪水を起こさなかったか

✎ 1〜 ✎ 27 ✎ 28 ✎ 29 ✎ 30
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ドナウ川はドイツ南部に水源をもち、オーストリア、ハンガリー、ルーマニアなど中欧・東欧10カ国以上を通って黒海に注ぐ、ヨーロッパで2番目に長い大河だ。

中欧の歴史は、ドナウの氾濫の歴史だ。

何度も洪水に苦しめられてきたウィーンでは、19世紀後半にハプスブルク家の大改修により、蛇行していたドナウ川は直線に近くなった。1970~1980年代には、本流と並行した2本目の川「ノイエドナウ(新ドナウ)」を掘り、幅250m長さ21kmの細長い人工島を建設する大工事が行われた。

人工島ドナウインゼル
ドナウ本流(奥)とノイエドナウの間には、人工島ドナウインゼルが横たわる。島や岸辺は有事のときに水浸しになるので、散歩道やサイクリング道、テラスカフェ、野外フェス会場などとして利用されている(写真:筆者撮影)

「世界初の洪水防止策」と賞賛

ドナウ川を縦に2つに割り、片方の川の入り口に水門を設けることで、水がせき止められたノイエドナウと、本流を分けたのだ。雪解け水や上流の降雨などで水位が上がると、水門を開放して洪水を防ぐ仕組みだ。

この治水工事は、国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)により「真に多目的で完全に持続可能な、世界初の洪水防止策」と称賛された。

ドナウ川 ノイエドナウ 人工島ドナウインゼル
ドナウ川本流(手前の太い流れ)とノイエドナウ(奥)。中央の細長い島が人工島ドナウインゼルで、入り口には橋の形をした水門がある(写真:筆者撮影)
ノイエドナウ
ノイエドナウの水をせき止める水門(写真:筆者撮影)
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事