松田様、深刻な病気のことを私にご相談くださり恐縮です。双極性感情障害とは、以前は躁うつ病と呼ばれた障害ですね。もう10年も精神科にかかっておられるのでしたら、専門家の治療や助言も、十分に受けてこられたものと存じます。そのうえで、素人の私の意見も聞いてみたいということだと思います。
双極性感情障害は、安定期でも薬をやめてはいけない
この障害は、薬を勝手に調節するのが、いちばんいけないことだといいます。私は「やめていた薬を再開し」という文面が、気になっています。この障害にかかっても、何十年も再発せず、問題なく普通の生活をしている人がたくさんおられます。それは躁状態でも鬱でもない状態でも治ったと決めつけないで、医師の治療を受け続け、薬を服用し続けることが大切だといいます。
精神科系のお薬は、飲み続けること自体が、患者さん本人には相当辛く、精神的な負担も大きいものだと聞いております。けれどもお薬を勝手に減らしたりやめるのは、いちばんいけないことだということも、ご承知のここと存じます。
私が友人の付き添いで、ある精神科へ行ったときのことです。その待合室で驚いたのは、女優さんと学者の集まりかと錯覚するほど、綺麗で立派に見える患者さん方が、みなさん静かに読書をしながら、順番を待っておられたことです。そこで安易に薬を減らしたりやめたりせず、この障害と上手に付き合うということはこういうことかと、納得したのでした。
普通の暮らしができるのもこの障害の特徴で、再発予防上大切なことは、本人がこの障害をしっかり認識し、繰り返される症状の波と、うまく付き合おうという積極的な姿勢が重要だと聞きました。そんなことが可能なのかと疑ってしまいますが、これは専門家の言葉ですから、松田様も、さんざん聞いてこられたことと思います。
実は20年ほど前、30代の知人・佐山さん(仮名)も、この病気にかかりました。大きな組織で活躍していた有能な方でしたので、最初は本人も周囲もパニック状態でした。佐山さんは躁状態の時は、地域のご意見番か支配者のように振る舞います。誰彼となく捕まえては、その人の欠点や、陰で噂されていることを、噂をした人の名前も明かして批判しました。病気が言わせているとはわかっていても、佐山さんを取り巻く人間関係は、めちゃめちゃになりました。
私はこの障害を持つ人を数多く知っていますので、この障害の傾向のひとつかと勝手に感じていることがあります。それは自分の身近にいる人(たとえば夫婦ならその伴侶、子供ならいちばん世話をしてくれる親、家族から離れている人なら最も親身になってくれる友人など)に、いちばんつらく当たったり恨んだりする傾向があることです。
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