もう一度、この会話を振り返ってみましょう。そうすると、夫の言葉の裏には「今、疲れているからその話は聞きたくない」という本心が見え隠れします。つまり、ここでいちばん問題なのは、夫の「言葉と気持ちが一致していない」ことです。実は人は、自分の本当に言いたいことがわからないまま、言葉を発することが少なくありません。しかし、コミュニケーションの基本は、「自分の本心をしっかり伝える」ということ。まずはその点をしっかり認識しましょう。
そもそも妻は、夫に解決策を示してもらいたいわけではありません。大変な状況を聞いてもらいたい、共感して受け止めてほしい。それが妻の本心です。ですから、まずは「忙しくて大変なんだね」と、妻の気持ちを受け止めること。妻の話をしっかり聞いたあとに、「そんなに辛いのであれば、やめるのもありだと思うよ」とアドバイスをするのは、もちろんありです。
もし、妻の話を聞く余裕がないのであれば、無理に聞く必要はありません。いったん受け止めの言葉を返したあと、「ごめんね。今日は疲れているから、今は詳しく聞けそうもないかな」と正直な気持ちを伝えてください。中途半端に聞き流したり、「時間のあるときにゆっくり聞くよ」などと、確約できない約束で先延ばしするのはおすすめしません。まずは受け止める、それから本心を言葉にすることを心がけましょう。
妻 夏休みは沖縄に行きたいんだけど、もうちょっと有休取れないの?
夫 仕方ないだろ、メンバーとの兼ね合いで休めないんだから。働いているほうの身にもなってくれよ。
働いているほうの身にもなってくれよ
ごめん。メンバーとの兼ね合いで、これ以上休み取れないんだ
事実を伝えるのに喧嘩腰になる必要なし
夫がここで伝えたいのは、「休みが取れない」という事実です。しかし、「仕方ないだろう」「働いているほうの身にもなってくれ」など、相手を怒らせるような言い方をすることで、「話し合う余地なし」という緊張状態をつくり出しています。
仕事で忙しいところに休みの話をされて、イラつく気持ちはわからなくもありません。とはいえ、それを喧嘩腰で伝えてしまうと、妻も「仕事だからってなんでも偉そうに。家族のことはどうでもいいわけ?」とムキになって反論したくもなるでしょう。
休めないという事実は変わらないのですから、家族の希望を叶えられないことに対して、一言「ごめん」という言葉があると、妻の受け止め方も変わるはずです。そのあとは、妙な言い訳をしたり、高圧的になったりせず、淡々と休めない理由を話せばいいと思います。
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