世界で勝てる企業が第一、雇用保護ありきではない--産業革新機構社長 能見公一
われわれが新社長を選ぶ基準は主に三つ。一つは3社を取りまとめる力。大企業病とは言わないまでも、プライドの高い一流企業3社を統合するのは非常に大変だ。(エルピーダ出身ということは)ある程度、そうした統合における実績を持っていると思う。
二つ目は液晶と半導体の親和性。出身業種が違うことを危惧されるかもしれないが、両者は産業としての形、たとえば市況の変動の大きさやスピード、装置産業であることなど似通う部分が大きい。半導体で培った感度、土地勘が生きるのではないか。
三つ目は経営者としての性格的な強さ。ある程度はっきり物を言ったり、決断したりする人でなくてはならない。周囲の言うことを聞いて、足して3で割るような性格では成り立たないと思う。
そうした基準の下、私たちもプロの業者を通じてリストアップされた何人もの対象者から選び抜いた。今、3社間で意見が割れている新工場計画をどう進めるかについても、新社長の決断力が重要になる。
3社の利害調整には新社長の決断力が肝要
──2000億円という投資資金の使途は決まっていますか。
細かい試算をしているが、一つひとつ内訳は教えられない。ただ、いちばん大きなものは中小型液晶の新工場の建設資金で、1000億円ぐらいの金額でイメージしている。
──なぜ新工場建設資金の提供まで、当初のスキームに織り込んだのですか。3社はもう複数の工場を国内に保有しているのに。
統合という新たなスタートを切って、戦うための当座の武器はそろえておこう、という考え方。今後、中小型液晶の市場拡大でシェアをつかむには、さらなる生産体制の拡大が必要。工場のスクラップ・アンド・ビルド(S&B)にも活用できる。旧世代の生産技術の工場から最新鋭の量産技術を搭載した新工場へ移せば競争力を高められる。