世界で勝てる企業が第一、雇用保護ありきではない--産業革新機構社長 能見公一
──経済産業省から再編に介入するよう指示があったのでしょうか。
経産省側からは「技術の海外流出は避けてほしい」という意向はあった。しかし、この案件自体は経産省からの指示でやったわけではない。一般的にいってもそうだが、当機構がまず投資案件と金額を固め、経産省へは最終的な意見書をもらいに行くだけ。経産省が当機構の案件を厳密に管理しているわけではない。
──初めて各社に提案をしたのはいつ頃でしょうか。
たしか10年の春ごろだったと思う。
──最終合意までに1年半もかかったのでは、世界で戦うには心もとないスピードのような気がします。
それは、しょうがないでしょう。当機構でもピーク時は150人ぐらいの人が動いて、いろいろな角度から将来戦略、市場調査を行った。これだけ大きな案件なのだから、かなりの人とおカネを投じて、プロジェクトを進める必要があった。
それをたとえば、韓国企業の意思決定の速さと比較されても困る。オーナー経営者が即断即決する韓国企業に比べ、日本企業はサラリーマン経営者が中心。各社がそれぞれの事業戦略をお持ちの中、あくまで選択肢の一つとして頭に置いていてほしいという言い方しかできなかった。3社が出たり入ったりする中で煮詰まってきて、最終決断する時まで待たなければならなかった。
──新社長はエルピーダメモリ元COOの大塚周一氏に最近内定したと伺いました。大塚氏を選んだ理由は何でしょうか。
大塚氏の人事はまだ3社の合意を得ていないので、ここはあえて一般論として聞いてもらいたい。