世界で勝てる企業が第一、雇用保護ありきではない--産業革新機構社長 能見公一
官民ファンド・産業革新機構が2000億円の資金を投じソニー、東芝、日立製作所のジリ貧事業を“救済”する。2012年春に3社の中小型液晶事業を引き継ぐ新会社「ジャパンディスプレイ」を設立、同機構が株7割を出資する。拠出する資金は国の債務保証付きの銀行借入金で、失敗は即、国民負担となる。国策企業の勝算は──。統合を主導した能見公一社長に話を聞いた。
──今回の投資の狙いと経緯をあらためて聞かせてください。
日本企業の「技術で勝って事業に負ける」状況が問題視されている。日本発の技術や、日本企業が先陣を切って事業化した製品が、市場の拡大期になると世界シェアをどんどん落とし、韓国、中国、台湾などの企業に市場を席巻されてしまう。
日本の産業競争力向上を目的にする当機構には、この負けパターンをどうにかできないか、ほかにやりようがあるなら手助けできないか、という発想がもともとあった。
大型液晶パネルに関しては技術も成熟化し、日本企業の勝ち目が見えなくなっている。しかし中小型液晶パネルは、スマートフォン向けなどの市場が今後も拡大していくうえ、タッチパネル技術など日本が得意とする技術革新の余地もある。日本企業は勝ち残れると考えている。
そのためには国内の過当競争を変えなければならない。1業種1~2社に絞っている韓国なんかは自国市場で十分な利益を上げている。そうした利益を新規投資につぎ込めば、ボリュームを増やしコストを減らせる。日本企業は国内の予選でくたくたになって、オリンピックで戦う体力がなくなっているのではないか。
そこで当機構は一つの投資仮説を立てた。複数の会社が一緒になった場合に、どれだけの量産効果、材料調達費の削減効果、研究開発の重複解消などの効果が期待できるのかについて、細かな試算を行った。また、能力拡張のための設備資金も当機構がこれだけ提供します、と示した提案書を作って、業界の各社に話を持っていった。最終的にプランに乗ってくれたのが3社だった。