リベラルが勝てない要因は「脳の仕組み」にある 人間の脳は加齢とともに「保守化」していく

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したがって、人間の能力の一部に過ぎない記憶力をことさら重要視する現代の教育や受験制度は、せっかく最適化されてきたはずの人類の生存戦略をかえってゆがめてしまっている可能性があるのではないかと思います。

テストでは高得点を取るために記憶力が高い人が有利になるのは確かですが、その結果をそのまま優秀であるかどうかのランク付けとして使うのはいかがなものかと思います。

テクノロジーによって補完される人間の記憶

というのも、テクノロジーの発達によって、不完全な人間の記憶力はどんどん補完されるようになってきており、実際にその仕組みは社会でも利用され始めているからです。

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文字をパソコンやスマートフォンで打つようであれば、漢字の書き方を忘れても大きな問題にはなりませんし、そもそも人間の漢字記憶力は、パソコンやスマートフォンには絶対に勝てません。ならば、使用頻度がそれほど高くない漢字を覚えるより、素直に電子機器の恩恵にあずかった方がよさそうです。

警察は、逃げた犯人を追うとき、今や目撃者の情報だけでなく監視カメラを活用します。交通事故が起きれば、当事者同士の記憶に基づく証言よりも、ドライブレコーダーの映像の方が証拠能力として高く扱われるでしょう。

人間の不完全な記憶力を補完するこうした機器の性能を、私たちはすでに自分たちよりも優秀だと認めているわけです。このような機器の性能はこれからさらに高まっていくわけですから、優秀な人を見分ける基準として記憶力という尺度を使うのは、多くの人が同じように感じていると思いますが、すでに時代にそぐわなくなってきているのかもしれません。

中野 信子 脳科学者

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なかの のぶこ / Nobuko Nakano

医学博士、認知科学者。1975年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所にて、博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。現在、東日本国際大学教授。著書に『脳内麻薬』『ヒトは「いじめ」をやめられない』『サイコパス』などがある。テレビ番組のコメンテーターとしても活動中。

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