リベラルが勝てない要因は「脳の仕組み」にある 人間の脳は加齢とともに「保守化」していく
生きるためには食べなければいけないのに、その本能に逆らってひたすらダイエットを続ければ、そのうち健康を害し、餓死すらしかねません。元々、トップダウンのシステムが弱くなるのが健康な状態で、そのようにできているのです。
その典型は女性と出産の関係かもしれません。女性が自分の生命維持を最優先するなら、子どもを産むという行為は、リスクが高過ぎると言えます。実際に、医療がこれほど発達していない時代には、お産で亡くなる女性も多かったのです。
しかし、それでは種としての人間が絶えてしまいます。だからこそ、トップダウンではコントロールできないような、愛情や性欲、子どもへの愛着などが強くなるように仕組んであるわけです。
「完璧な記憶」は人生をつらいものにするだけ
記憶力も同様です。完璧に記憶でき、忘れない脳があったらいいと思う方もいるでしょう。しかし、記憶は不完全になるように、あたかも設定されているかのようです。
それどころか、都合よく記憶同士を合成したり、書き換えたりすることも行われます。場合によっては、自分の昔の恋人との記憶と、現在の配偶者との記憶が混在してしまう……というような事態も生じたりしてしまうわけですが。
かといって、完璧に記憶できる人が仮にいたとしたら、一体どうなるでしょうか。嫌な思い出を忘れることもできず、周囲に合わせるための都合のよい記憶の書き換えもできず、かなりつらい人生を送ることになるでしょう。
記憶が徐々に消えていく、あるいは書き換わる仕組みが存在するのは、より良く生きていくためには自然で、当たり前のことだと言えます。
例えば、体験した危険な出来事を学習し、同様の事象を回避するための安全装置として記憶の仕組みが発達してきたのだとすれば、一定期間その危機がやって来なければ、その案件の重みづけを変え、優先順位を低く見直す仕組みが必要になります。
それよりも、高頻度かつ致命的な影響を与え得る危険の方を優先的に回避するべきで、なかなか起こらないことに記憶のリソースを割いていると、かえって重要なことに対応できず、危険な状態になってしまいます。
また、過去の失敗だけでなく、成功体験にとらわれやすくなるために、前例のないことには新しい挑戦をしにくくなります。
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