「祖母は、『なんで私が死ぬ準備をするの?』としきりに言っていました。老人ホームに入所するとなったときも、合鍵を返してほしいと言うくらい片付けを嫌がっていました。『私が病院にいる間に部屋触るやろ』って。最終的には諦めるしかなかったですね」(二見氏、以下同)
二見氏の祖母の家も、今回片付けをする家と似た状況だった。生活の大半はリビングだけで完結しており、残っている3部屋はほとんど足も踏み入れない。そこにモノが溜まっていく一方だったが、部屋を使っていないので住んでいる本人は困らない。本人が生きている間は片付ける動機がなかなか生まれないのだ。
「私も祖母の気持ちはよくわかりました。老後になって趣味を楽しんで、植物をいじって、最後は好きなモノに囲まれて死にたいって思うでしょう。でも、その負担はすべて残された家族が背負うことになるんです」
たとえば高齢者が介護保険サービスを利用する際、ベッドを置くスペースを設けたりヘルパーの動線を確保したりするために、部屋の片付けが必要になってくる。その場合、自治体によっては片付けの作業に補助金が下りるケースがある。生きているうちに片付けるからこそ、金銭的な負担が軽減されることもあるのだ。
生前整理で「最優先にすべきこと」
二見氏の祖母は生前、子どもや孫たちに「葬式の費用はすでに払ってある」と伝えていた。しかし、実際のところ済んでいたのは基本料金の支払いのみで、花代などさまざまな費用が後からかかってきたという。僧侶に支払う戒名代も高くついた。
「祖母は生前に戒名代を払っていたんですが、『個人情報なので』と僧侶はその額を教えてくれなかった。結局、お気持ち代として追加で支払うことになりました。なんじゃそりゃって思いましたけど」
二見氏の場合、祖母の家の片付けは自社で請け負うことができたが、一般の人はそうはいかない。ましてや持ち家ではなく賃貸物件に住んでいた場合、遺品整理も含めて片付けがすべて完了するまで家賃を払い続けないといけない。
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