現代は、人をだますことがかつてないほど容易な時代。
そして人は誰しも、多少なりともやすやすとだまされてしまう性質を秘めている。毎日といっていいほど報道される特殊詐欺のニュースは決して他人事ではないのだ。
世界でベストセラーになった『全員“カモ”』は、「だましの手口」のケーススタディをふんだん挙げつつ、この時代に「人々はいかにだまされるのか」を体系的に考察した書。
今、もっとも詐欺のカモになりやすいのは、どのようなタイプなのか。
人間の「だまされやすい性質」を克服するにはどうしたらいいのか。
本書をもとに、ジャーナリストであり作家としても活動する佐々木俊尚氏に聞いた。
「起こらなかったこと」に目を向ける重要性
時代を問わず、ステレオタイプ的なものの見方をする人はたくさんいます。特にX(旧ツイッター)などを見ていると、いわゆる大衆の感情や思考の傾向がよくわかる。本書には、大衆がどういう認知の歪みに陥りやすく、いかにして詐欺の手のうちに落ちてしまうのかという考察と事例が多く載っており、日ごろSNSをウォッチしている身としても「たしかに」と首肯するところが多くありました。
たとえば本書には、「洪水を防ぐための予防策は成功しても称賛されないが、堤防が決壊すると市民の怒りを買う」という話が出てきます。「何らかの行動によって悪いことが起きるのを防いだとき、私たちはめったに覚えていない」、ゆえに「起こらなかったことに目を向けること」の重要性を指摘しているのですが、そこで思い出されたのは、反ワク派――つまり新型コロナウイルスのワクチンに反対していた人たちです。
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