史上最悪の金融詐欺が仕掛けた「一貫性の罠」 「リスクなし」「損しない」という甘いカラクリ

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詐欺師
詐欺師の表の顔は「一見普通の人」(写真:kai/PIXTA)
「話がコロコロ変わる人は信用できない……」は、洋の東西を問わず、人間の真理であるが、これを逆手に取るのが、詐欺師だ。一貫性がある話をして相手を信用させて、コロッとだましてしまう。多くの人は「一貫性を好む」から、話に筋が通っているだけで、詐欺師を信用してしまう。
このように一貫性は悪用されやすい。また変化のスピードが激しい現代では、一貫性にこだわると、取り残される危険性をはらむ。心理学者のダニエル・シモンズ、クリストファー・チャブリス両氏は、アメリカで話題沸騰の最新刊『全員“カモ”』で一貫性のパラドックスを指摘し、悪用されないために、その対極概念である「ノイズ」を考慮せよと提唱している。

人は損する可能性があるゲームをしない

人は、高配当が見込めても危険な賭けを避けたがる。儲かる喜びよりも、損失を出す心痛のほうが大きいからだ。

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株式市場と似たところのあるコイン投げの賭けを想像してみよう。表が出たら10ドルもらえるが、裏が出れば損をする。損がいくらならゲームをやってもいいと思うだろうか?

資金に余裕があり、長時間ゲームを続けられるなら、裏が出たときに9.99ドル損しても問題ないだろう。くり返しすればコインを投げるたびに平均0.01ドル儲かることになるからだ。

ところが、たいていの人は5ドル程度と答える。0ドルと言う人も多い。要は、損する可能性があるなら、ゲームをする気などないのだ。

損失のリスクはどんな合法的な投資にもつきものである。こうしたリスクを嫌う人々がバーニー・マドフの提案に群がった。それは、負ける年のない細く長く安定した年間リターンだった。

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