ほんの数カ月前、いや、最近まで私たちは翔平と一平の友好的なムードを温かく見守っていたはずだった――水原一平氏の裏切りが明るみに出るまでは……。
アメリカ・メジャーリーグで活躍する大谷翔平の元・通訳、水原一平氏が関与したとされる違法スポーツ賭博。報道によると、水原氏はその行為を大谷氏にひた隠しにし、大谷氏の口座から大金を盗み取った銀行詐欺容疑で訴追されている。真実はこれから連邦裁判で明らかになるだろうが、これまでも歴史上でくり返されてきた「まさか、あの人に裏切られるなんて……!」という背信行為が、なぜいともやすやすとなされるのか。
過去にイグ・ノーベル賞を受賞した認知心理学者らによる最新作『全員“カモ”』には、その「だまし・だまされる心理」の糸口が解説されている。
疑うことさえ忘れる
人は、つねに何かを想定しているが、それが危険なものになることがある。何かを想定していることに無自覚だったり、想定を裏づけるはずの証拠がいつのまにか不十分になっていたり(または、そもそも最初から裏づけになっていないことに気づいていない)、想定がある一線を越えて引くに引けなくなったときなどだ。想定に固執するあまり、疑うことさえ思いつかなくなるのだ。
科学や医学がテーマの「Slate Star Codex」というブログに投稿した匿名の投稿者は、思い込みと証拠のあいまいな関係性について次のように雄弁に説明している。
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