一青:前回は、子どもを非行に走らせないためには、周りに信頼できる大人がいて、子どもが発しているサインに気づくことが重要であるとうかがいました。
ですが、子どもの頃からずっとひどい虐待を受けていたと聞くと、その子が犯罪に手を染めてしまっても仕方がなかったのでは、と思うことがあります。それでも、事件を起こして人を殺めたとなったら、その人に罪を償わせるわけですよね。
出口:周りにも責任があるのに、問題を起こした人にだけ罪を押し付ける。カウンセリングをしていても、私もなぜこの人だけが罪を背負わされるんだろうと疑問に思うことがあります。
特に、「生命犯」と呼ばれる、人の命を奪ってしまった人は複雑な背景を持っていることが多いです。そのような場合は、罪を犯した人に生命を尊重する教育をすればいい、というほど単純ではないですよね。
一青:詰まるところ、一線を越えずに踏みとどまれるかどうかは、周囲から適切に愛を注がれるかどうかにかかっているということでしょうか。
出口:そうですね。それは、すごく重要なポイントだと思います。愛情欲求というのは、マズローの5段階欲求でも土台になる基礎的な部分ですから、それが満たされていないと心が安定しません。心が安定しないと、衝動に突き動かされてさまざまな問題を起こしてしまうわけです。
一青:一方で、犯罪者の証言の中には、ずっと嘘をつき続けているような人もいますよね。もはや何が真実かわからなくなってしまいます。
出口:そこは、まさに重要なポイントです。嘘に嘘を塗り重ねていくうちに、自分でも何が事実かわからなくなってしまう人がたくさんいるんです。そうすると、だんだん自分に都合のいい話の組み立てをして、それがその人の中で真実のようになっていく。
心理学では「合理化」と言うのですが、嘘とは、もともと失敗を隠したいとか、言い訳をしたいとか、自分にとって「仕方がなかったんだ」と思うためにつくものです。ところが、その「仕方がなかった」をいくつも重ねていくうちに、自分でもそもそもなぜ仕方がなかったかがわからなくなっていってしまうのです。
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