一青窈が問う「闇バイトや無敵の人」犯罪の深層 【後編】犯罪心理学者・出口保行さんを訪ねて

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普通、コストとリスクが大きかったら、犯行に及ぼうとは思いません。従来の犯罪はこの枠組みで説明することができました。ところが「無敵の人」が出てきてからは、これで説明がつかなくなってしまった。

「無敵の人」の犯罪は人前で行われて捕まるに決まっているし、全部失うことがわかっているわけです。それなのに犯行に出る。もはやリスクとコストでは、抑えが利かないようになっている。それも今の犯罪の大きな特徴だと思います。

それに「無敵の人」は先ほどの闇バイトに関与している人たちと一緒で、犯罪履歴がないから犯罪予測ができないのです。

犯罪を未然に防ぐためには想像力が大切

一青:多くの犯罪者に会ってきた出口先生は、それでも人を愛すべきだと思いますか。

出口:もちろんそう思います。正直言って、刑務所の中には憎たらしいことを言う人がいっぱいいます。心理学で「好訴性」という言葉があるのですが、「一日一訴」と言って、一日一回何かを訴えないと気がすまないような人もいます。そんな人は、何を言っても訴えるから、やっかいに思うことがあります。

ただ、それでも愛情を持って接していると、「実は先生…」と話してくれるときが必ずくる。いきなり、ポロッと出てくる。そのタイミングは、ずっと続けていてこそ訪れるものだから、人間を愛すべき存在だと思っていないと絶対に無理だと思います。

一青窈さんと出口保行さん
一青窈さん(左)と出口保行さん(撮影:梅谷秀司)

一青:人間はオギャーと生まれてきてから、人とかかわらずに生きていくことはできないから、人に対して関心を持って愛情を注いでいくために心理学の重要性を実感し、犯罪を未然に防ぐために想像力が大切であることを再認識することができました。

そうは言っても、人間とは今日は気をつけることができても、明日には忘れてしまうような生き物でもあるから、日々誰かの言葉と真剣に向き合うことが大切で、そうすれば、大きく道を外すことはないと勇気づけられました。

自分の言葉が届かずに絶望しているときもありましたが、あきらめずに歌を通じて人に届く言葉を書いていきたいと、今日改めて強く思いました。

→→【前編:「人はなぜ犯罪を犯すの?」一青窈が専門家に聞く】

川下 和彦 クリエイティブディレクター/習慣化エバンジェリスト

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かわした かずひこ / Kazuhiko Kawasita

2000年、慶應義塾大学大学院修士課程終了後、総合広告会社に入社。マーケティング、PR、広告制作など、多岐にわたるクリエイティブ業務を経験。2017年春より、新しい事業を創造し、成長させることを標榜するスタートアップ・スタジオに兼務出向。広告クリエイティブに留まらず、イノベーション創出に取り組んでいる。著書に『コネ持ち父さん コネなし父さん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ざんねんな努力』(アスコム)などがある。(撮影:原貴彦)

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