一青:学生時代に、森達也さんの『A』という、オウム真理教の内部から社会との関わり描いたドキュメンタリー映画を観る機会がありました。個人的にも身近で宗教に絡む不可解な出来事があり、宗教についてもっと勉強したいと思うようになりました。
そうこうしているうちに、いったい何が人を狂わせるんだろうと考えるようになり、罪を犯してしまう人の心理にも興味を持つようになったのです。出口先生は法務省にお勤めだったとき、鑑別所で直接犯罪者や非行少年に会ってリアルに話を聞く機会が多かったと伺いました。
宮城刑務所や東京拘置所などで、重大犯罪に手を染めた受刑者の心理分析もされたそうですが、そのような人たちはどこか"ボーダー"を越えてしまっている存在なのでしょうか。
出口:決して、そんなことはありません。よく「犯罪者って、どんな人なんですか」と聞かれるのですが、「犯罪者というのは、こういう人です」とは、決められないんです。私たちだって、今は「犯罪者」と呼ばれていなくても、いつ"橋"を渡って向こうに行ってしまうかなんて、誰にもわかりませんよね。
つまり、元から犯罪者という人間が存在しているわけではありません。もちろん重大な罪を犯した受刑者は、例えば金銭に対する感覚、友だちに対する感覚、男女の関係に対する感覚などが偏っている人は多いかもしれません。とはいえ、私たちだっていつ偏っちゃうかわからないわけです。
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