新型コロナで「4000%超」の収益を得た覇者の正体 「ブラック・スワン」を制した「カオスの帝王」

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スーツ姿の男性とグラフ
パンデミックに市場が揺れるなか、3カ月の収益率4144%以上という驚くべき数字を叩き出すことができたのは、なぜなのでしょうか(画像:taa/PIXTA)
新型コロナ・パンデミックに市場が揺れる2020年3月。投資顧問会社ユニバーサ・インベストメンツは4000%を超えるリターンを叩き出した。多くの投資家が匙を投げ、多額の損失を被るなか、なぜユニバーサは莫大な利益を生み出すことができたのか。『カオスの帝王:惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち』(7月24日発売、電子書籍版では7月11日から先行配信開始)では、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙記者の著者スコット・パタースンが、ユニバーサの最高投資責任者マーク・スピッツナーゲルと、ベストセラー本『ブラック・スワン』の著者ナシーム・タレブが確立した投資戦略とその哲学に迫っている。本稿では、同書の一部を抜粋し、お届けする(全3回)。

市場の混乱で利益を上げるヘッジファンド

マーク・スピッツナーゲルは呆然とコンピュータ画面を見つめた。2020年3月16日月曜の早朝。世界中の市場がこれほどまでの機能不全に陥ったことが信じられなかった。

『カオスの帝王:惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち』書影
『カオスの帝王:惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち』は7月24日発売(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。電子版はこちら。楽天サイトの電子版はこちら

世界市場は死んだも同然だった。何も取引されていなかった。投資家たちは壊滅的な損失を避けるためポジションを解消しようと死に物狂いだったが、株式からコモディティや債券に至るまですべてが急激に下落していたから、売るに売れなかった。トレーダーは世界で最も流動性の高い資産である米財務省長期証券、通称T-Bondすらも売ることができなかった。まるで米国債の価値がゼロになったかのようだった。

2020年初頭に新型コロナのパンデミックが広がると、世界中の金融市場がぐらつき、やがて崩壊した。3月初旬には、ダウ工業株平均が2000ポイント以上という未曽有の急落から2000ポイント再び上げる動きが毎日のように繰り返され、それが常態化したように見えた。市場は今までにない変動の嵐の中にあった。

それはユニバーサ・インベストメンツの創業者スピッツナーゲルにとって好都合だった。ユニバーサは市場の混乱によって利益を上げるユニークな戦略を取るヘッジファンドだ。スピッツナーゲルはミシガン州の半島に位置するノースポート・ポイントの深い森の中に建つ、築100年のログハウスをホームオフィスにしていた。

アメリカ全土がロックダウンになり、彼はここで暮らす家族と合流するために前の週に飛行機で移ってきた。窓の外に目をやると、ミシガン湖のノースポート湾の先に、雪に覆われたアイディル農場のなだらかな起伏が眺められた。この農場で彼と妻はヤギを育て、賞を獲ったチーズを製造している。

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