気づかぬうちに陥る「現代の情報弱者」とは誰か 「だまされる人が愚か」だと言い切れない事情

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つまり北陸新幹線には、東京と新大阪を結ぶ大動脈である東海道新幹線が機能しなくなったときのセーフティネットという意味合いがある。「北陸新幹線が新大阪まで延伸する」という話に接したときに、こうした背景について考えが至らない人ほど、「地元のメリット」「自分にとって便利か、不便か」というミクロな視点でしか見られないわけです。

一事が万事で、ある物事について考えるときには、俯瞰的な視点も持ち合わせていないと、事の本質を大きく見誤る可能性があります。近くで見たら、今度は一歩引いて遠くからも見てみる。マクロ的な見方とミクロ的な見方を行き来する。一方から見たら反対側からも見てみる。いろんな意見に接してみる。このように、ものの見方の「射程」を伸び縮みさせることが大切です。

メディアが仕掛ける「情報エンタメ」のしくみ

ものの見方の射程を伸び縮みさせる重要性について述べてきましたが、視野が狭いものの見方をする危険性は、そのまま「だまされやすさ」にも通じていると言っていいでしょう。人はいかにだまされるか。その事例が鋭い考察と共に紹介されている本書を読んでいると、そんな「カモにされやすい人」の類型が想起されます。

まず、「情報弱者」は間違いなくカモられやすい。たとえば、テレビのワイドショーに乗じて怒ったり騒いだりしているような人たちです。

ワイドショーは、たいてい「おもしろい人」「キャラが強い人」「ズバリ言い切る人」「何か含蓄に富んでいるように見える人」などを瞬発的に選んでコメンテーターに据えているだけで、「その道の本当の専門家であること」「まともな知見にもとづいていること」「一貫性があること」といった信憑性の優先順位は実は非常に低いのです。そのため昨日と今日とでは論調が真逆であることもしょっちゅうです。

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