「JTには人事異動を担当する管理職が、事務系と技術系に一人ずついます。技術系だけでも社員が数千人いるわけですが、その管理職が、よくそんなことまで知っているなというぐらい、社員1人1人のことを理解しているのです。それを知ったとき、『そうか、もし上司と喧嘩しても、最後は人事が見ていてくれるんだ』ということが分かり、私も安心してやりたい放題できると思いました」
無茶をしてもクビにならない上司と、社員のことをよく理解してくれている人事。この2者の存在があったからこそ、米田さんは次第に自分のリミッターを外していくことができたのである。
その後米田さんは、採用担当、採用チームリーダー、人事部長を経験し、「採用のプロ」としてのキャリアを歩む。そして、その過程で “優秀”に留まらず、やがて“変な人”になるポテンシャル人材を発掘し、採用する独自の方法を編み出していく。
「JTがどういう人を採用したいと思うか。たどり着いた結論は、“顔つき”です。R&D部門採用の20名弱の社員の最終面接は今でも私が行っているのですが、最終的な採用基準は顔つきがJT向きかどうかです。
当然能力も見るので、仮に足切りラインを6とすると、5以下の学生は採りません。それで6以上は面接を繰り返すのですが、最後に10の学生と6の学生が残ったとき、10の学生がJT向きではなく、6の学生がJT向きだったら、6を採るのです」
10年後に成せる仕事のレベルは「相性」で決まる
なぜ採用の時点の能力よりもJT向きの顔つきを優先するのか。米田さんはこう続ける。
「学生の段階で重視するのは、ポテンシャルです。私は自分の経験から、人は最高で10年後には10倍の仕事ができるようになると考えるようになりました。すると、会社に入ったときに10の仕事ができる学生は、うまくいけば10年後100できる可能性があるわけです。
ところが、実際10倍というのはマックスであって、合わない会社に行ってしまうと、これが3倍ぐらいに終わってしまう。そうなると、もともと10の人でも10年後の能力は30です。一方で、最初は6で入った学生は10倍、いや6倍になっただけで36になる。6で入った学生が10の学生を超えてしまいますよね。その伸びるか伸びないかの差は、その人が会社に合うか合わないか。会社が自分に合っていれば、頑張りが利くのです」
会社が型押しすれば、ある程度会社にとって都合のいい“優秀”な人材は量産できるかもしれない。しかし、自分の頭で考え、人と違うことをする“変な人”を育てるためには、会社に入った後にのびのび泳げる学生、言ってみれば「水に合った魚」を探すところに重点を置いているのだ。
ただ、せっかく水に合う魚を招き入れても、のびのびと泳げる環境がなければ、魚は力を発揮することができない。そこで米田さんは、“変な人”が育つ環境を整えることにも力を注ぐ。
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