③の問題は②とも絡め、「高額の報酬を得てこそプロだし、多くの若者が目指す職業になり得る。それがレベルアップにもつながるわけだ。その意味でも5000人のアリーナを満員にする努力をしろ」と叱咤激励。
④に関しては、リーグが各チームの経営をチェック、指導することについて、「それはやるよ。(JBA専務理事の)大河(正明氏。銀行の支店長経験あり)は、それの専門家だもん。だって、今のような債務超過になっているとか、なりそうだとかいう自転車操業のチームが数多くあるのは大問題。リーグ全体から見ても健全な経営をさせていく責任がある。これはもう、しっかりやっていきますよ」と、経営体質強化を標榜しました。
川淵氏は今般の改革に際して、「横串」という言葉を多用します。「スポーツ界は縦社会で、横串はまったく刺されていない。お互い困ったときに知恵を出し合って、よりよい競技団体を作るために協力すべきで、それが色々なスポーツに広がっていくことを僕は心から願っています。お互いにこれから協力し合って、日本のスポーツ界全体が盛り上がっていくような動きがこれをきっかけに進んでいけばいいなと」。
このように、目先の利益にとらわれず、全体最適のため、そして明日の日本バスケットボールのためというビジョンを明確にしてきた川淵氏。だからこそ、厳しい基準を設けたにも関わらず、数々の提言が受け入れられる周囲の気風が出来上がっていったのでしょう。
「余計なこと」にまでは口を挟まない
もう一つ、川淵氏が周囲を効果的に巻き込めた要因があります。それは、厳しい基準を提示しながらも、バスケットボール関係者に「任すところは任す」という配慮を欠かさなかったことです。
たとえば、「現場のことは僕がやるんじゃなくて、bjリーグやNBLの中心となってやってきた人たちの知恵に任せればいい。僕が出るべき場面と、そうでない場面は、自分なりにしっかり区分けしてやっている」と、自身のスタンスを明確にしています。
相手のプライドを大切にし、相手の存在意義を肯定し、目指す未来に正しく向かうことが、ソリューション・フォーカス・アプローチの本質です。最後まで全力で怒れば、自分はすっきりするかもしれませんが、相手は離れていくか、「やってられるか」と本気を出さなくなるものです。
今般の川淵チェアマンらタスクフォースの改革で、旧来のバスケットボール関係者の中には、悔しい思いをされたり、恥ずかしさや不甲斐なさを感じた人も少なくないでしょう。それでもぜひ、関係者の方々には、悔しさをパワーやエンジンにして、モチベーションを上げてほしい。
アンガーマネジメントでは、怒りの感情と「上手に付き合う」ことについて、「怒りを建設的なパワーに変えよう」と伝えています。今般の改革をきっかけに、選手、指導者、フロント、地域行政、そしてファンが一体となって競技レベルを上げ、1976年のモントリオール五輪以来、出場が滞っている日本男子代表チームのオリンピック出場を叶えてほしいのです。
アンガーマネジメントに興味を持たれたかたは、拙著『パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)をご高覧ください。
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