川鍋一朗氏「ライドシェアは労働者に優しくない」 拙速な全面解禁はワーキングプアを生む可能性

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タクシーを含むバスなどの公共交通は、安全・安心の観点から「規制産業」として発展してきた歴史がある。1950年代には「神風タクシー」と呼ばれた無謀運転が横行したことで規制が本格化され、1960年代にはタクシーセンターも設立した。2016年には41名の死傷者を出した「軽井沢スキーバス転落事故」が発生しているが、大きな事故などを節目に、規制が強化されてきた。

「公共交通機関として、有事を避けるための知見や厳格なルール管理、万が一事故が起きた場合の責任の所在を明確にしなければいけません。それがプラットフォーム型のライドシェアだと明確にしにくい面がある。そもそもビジネスモデルに運行責任や最終責任という概念が組み込まれていないからです。そのためにもタクシー会社が管理を行う必要があるのです。

規制と緩和を繰り返してきたのが我々タクシー業界でもあり、その歴史の中でこれだけ安全・安心を徹底しても残念ながら事故は起きてしまうものです。特に日本のタクシーはトリップアドバイザーで世界一を獲得するほど評価が高く、その基準に国民も慣れている土壌があります。『日本型ライドシェア』の運行は、事故を起こさない制度づくりを含め、我々の存在意義をかけた闘いになるでしょう」(川鍋氏)

海外のライドシェアは労働者が優先されていない

川鍋氏は、コロナ前までは毎年ライドシェアの視察で海外を訪れ、各地で利用もしてきた。その経験から、「海外のライドシェアは労働者優先のビジネスではなく、あくまでプラットフォーマーや株主主体のビジネスの域を出ない」という結論に至った。

「前提として、ニューヨークのような大都市でもドライバーさんの収入はとても不安定。安定して稼げる仕事ではない、ということです。例えばマンハッタンでは、車の中で15%程度ライドシェアが占める割合が理想とされています。裏を返せば、それだけたくさん車両があって、顧客の奪い合いになっているということです。

つまり車両の増加はライドシェアだけではなく、タクシーなどの賃料も相対的に下げることになります。これではまったくもって労働者に優しくなりません。そこはしっかりと理解していただきたい部分でもあります。その視点からも全面解禁には反対です」(川鍋氏)

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