松浦弥太郎がエッセイで書かないと決めている事 どのように書くとエッセイはおもしろくなるのか

拡大
縮小

同じ文章にいろいろな要素が詰め込まれていると、すべてが同じ強さ、同じ大切さで並んでいるように見えてしまいます。

ケーキについてエッセイを書くとして、「これはおいしかった、あれもおいしかった、それもおいしかった」と書けば、「全部同じくらいおいしかったんだな」というふうに伝わってしまうでしょう。すると読み手は、「おいしいケーキの情報をたくさん得られた」という淡々とした読後感を持ってしまいます。

そうではなく、ひとつの「とびきりおいしいケーキ」について自分が抱いている愛情や、おいしさについて徹底的に書く。そのケーキが持っている「秘密」を見つけて書く。すると読み手もその熱量に動かされ、もっと没入できるのです。

「詰め込みすぎ」が多い傾向

時おり一般の方のエッセイを読んでみると、傾向としては、「詰め込みすぎ」が多いように思います。文章についてアドバイスを求められるときも、「いろいろあれこれと書きすぎているので、どれかひとつに絞りましょう」と言うことは多いです。読み手はあなたがいちばん伝えたい「ひとつ」についてもっと知りたいんですよ、と。

この「ひとつ」についてのとびきりの例が、向田邦子さんの有名なエッセイ「字のない葉書」です。

この作品は戦時中の家族の様子を描いたものですが、主題は戦争ではなく「お父さんの愛」。日頃はふんどしひとつで家の中を闊歩し、大酒飲みで妻と子どもたちに手を上げるようなお父さんですが、筆まめで手紙の中だけでは優しかったと言います。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT