中国人が逃げられない、「戸籍格差」の現実

これが「努力しても報われない」の実態だ

現在は上海市中心部の一等地130平方メートルのマンションに夫と娘と3人で暮らす。家事は家政婦と、近所に住む母親に一切合切任せている。しばしば深夜まで働く典型的なキャリアウーマンだ。

格差の背景にある「戸籍」問題

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今年の春節のボーナス(中国のボーナスは年1回)は、60万元(約1200万円)と過去最高だった。ちょっと信じられないくらいの金額だが、中国の大手銀行に勤務する人の中では、「飛び抜けて多い金額ではないですよ」と謝さん。

銀行からマンションを支給される以外にも、もう1軒夫が買ったマンションがあり、勤務先が子どもの塾代も支払ってくれるなど、待遇や福利厚生面で文句はない。市内には子どもの頃からの友人や親戚も多く、孤独を感じることは少ない。

なぜ2人の人生はここまで違うのか。10歳の年齢差があるとはいえ、学歴に差があるわけではない。私が知るかぎり、2人とも真面目、人並み以上の向上心をもって努力している。

むろん、日本でも、同じ一流大学を卒業したからといって、必ずしも恵まれている人ばかりではない。収入格差や昇進に違いが生じるのは、どの国でも当たり前のことだ。それだけを取って「差別だ」などという暴論をいうわけではない。

差が生じるのは、本人の努力や運などさまざまな要素が影響するから当然なのだが、中国人の「格差」を見るうえで最も重要なことは、中国は「努力したからといって報われない社会である」という“前提”が存在すること、そして社会制度が個人の人生に深く介在している、ということだ。

彼女たちの人生の明暗を分けたもの、それは日本人には想像もつかない「戸籍制度」にある。この中国で、最も大きな社会問題のひとつだと言われている事実を、ほとんどの日本人は知らない。

中国の戸籍は日本と違い、1種類ではない。詳しくは拙著『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中公新書ラクレ)にも記したが、非常に複雑なもので、中国人自身も、自分が置かれている立場以上のことはよくわからないというのが実態だ。

中国人の人生と戸籍は切っても切り離せないほど、人生に重大な影響を与えているのだ。それはどういうことなのかについて説明していこう。

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