秀吉に従った家康に課された「あるミッション」 任務のために17年住んだ浜松城を離れる必要も

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そんな緊急措置をとりながら、天正17年から翌年にかけては、根本的な対策として「五ヶ国総検地」と呼ばれる大規模な検地に取り組んでいる。

直属の奉行人によって、郷村単位で厳密な検地を実施。検地に前後して「七ヶ条定書」を発布し、その原則にしたがって年貢・夫役を課して、年貢目録を作成することとなった。

「七ヶ条定書」では、まず「年貢の納入について納入証文は明瞭なのだから、少しでも年貢滞納があれば重罪であること」と釘をさしている。

続いて年貢だけではなく、労役や馬の提供などについても「戦陣に徴発される陣夫役としては、年貢200俵について、馬1匹と人足1人を出さなければならない」といったふうに明快なルールが決められた。

さらに領主が百姓を働かせる場合の基準ももうけられた。「領主が百姓を働かせるときは、家別に年間20日とし、また代官の場合は3日とする」と定めている。

7カ条の最後に注目

注目したいのは、7カ条の最後にこう付記されていることだ。

「以上、7カ条を定め置いた。もし領主がこの規定を守らなければ、目安を以て家康に申し上げるべきである」

年貢と労役を明確化することは「それぞれが追うべき義務を明らかにすること」であり、裏を返せば、それ以上の搾取を禁じることでもある。家康はこの定めによって財政再建を図ると同時に、領主が規定以上の負担を農民に勝手に課すことを防ごうとしていた。

内容的には秀吉による太閤検地に近いが、徳川として自主的に検地を行い、領内政治を整備した点は評価に値するだろう。

「リーダーはポジティブであるべし」

そんなふうに言われることがある。確かに、リーダーが後ろ向きな発言ばかりしていたら、誰もついていきたいとは思わないだろう。

だが、現実的ではない目標をぶちあげたり、直面する事態を軽視して楽観的なことを言ったりするばかりでも、下で働く者は不安になるに違いない。

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