いまだ続くウクライナ侵攻、対ロシア制裁の抜け穴 期待された効果を発揮しているとはいえぬ理由

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欧米や日本は対ロシアの金融制裁として、ロシアの特定の銀行を国際的な決済ネットワーク「SWIFT」から締め出す措置をとりました。これは金融制裁のなかでももっとも強力な制裁です。これによりロシアの銀行は決済ができなくなるので、ロシア企業は輸出をしても代金をうけとれなくなります。ロシア経済には打撃となるはずです。

では、実際にロシア経済はどうなったでしょうか? ロシアの2022年のGDPは、制裁の影響があらわれる前の2022年第1四半期は前年比プラス3.5%でしたが、第2四半期は前年比4.1%減、第3四半期は前年比4%減です。制裁がロシア経済にダメージをあたえています。しかし、当初の予測では2桁のマイナスになるといわれていたなかで、比較的小さなダメージにとどまっているという見方もできます。

理由として考えられるのは、今回の金融制裁はすべての銀行をSWIFTから締め出したわけではなく、国営ガス企業ガスプロムのグループ銀行など、一部の銀行を残したことです。

ヨーロッパには、いまだロシア産天然ガスに依存している国があります。エネルギー関係の決済までできなくしてしまうと、そうした国々がロシアから天然ガスの供給を受けられなくなる恐れがあることから、決済手段を残したのです。これがロシアの「抜け穴」になってしまったのです。

ハイテク部品のロシアへの輸出を禁止

地経学的な手段を使うときには、相手のチョーク・ポイントをピンポイントで攻撃することで大きな成果がえられます。

ロシアのチョーク・ポイントは、自国で製造できない半導体などのハイテク部品です。そこで西側諸国は、こうした製品のロシアへの輸出を禁止しました。

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