いまだ続くウクライナ侵攻、対ロシア制裁の抜け穴 期待された効果を発揮しているとはいえぬ理由

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これによりロシアでは半導体などの部品不足が深刻になりました。自動車や航空機などの産業を中心に打撃をうけています。半導体は兵器にも使われますので、半導体の在庫が枯渇すれば、ロシアの兵器製造にも打撃となります。

しかし、ロシアはここでも「抜け穴」を探していて、対ロシア制裁には加わっていない中国やアラブ首長国連邦(UAE)などから半導体を調達しているとみられています。

制裁は制裁する側にも跳ね返ってくる

以上、いずれの制裁も期待された効果を発揮しているとはいえません。制裁の目的は、経済的にロシアを追い込んで、ロシアに戦争継続を断念させることですが、その段階にいたっていません。

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対ロシア制裁に加わるのは、世界的にみれば一部の国であり、制裁に加わらない国々がロシアにとっての抜け穴となっています。

ちなみに2022年、ロシアがもっとも接近している中国との貿易額は前年比で3割増えました。ロシアは世界的な経済大国となった中国を利用するだけ利用して、この苦境をしのごうとしています。

しかし、中国依存が進みすぎるとロシアのアキレス腱となるリスクがあります。ロシアと中国は国境を接する「潜在的な敵国」です。

一方、制裁は制裁する側にも跳ね返ってくることを忘れてはいけません。ロシアは食料・肥料、エネルギーを自給していて、世界中に輸出している国です。このような国に制裁をすると、制裁した国の食料・肥料、エネルギーが不足し、物価が高くなり、インフレになります。事実、制裁に加わる欧米や日本では、インフレが進行する結果となっています。

沢辺 有司 フリーライター

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さわべ ゆうじ / Yuji Sawabe

フリーライター。横浜国立大学教育学部総合芸術学科卒業。在学中、アート・映画への哲学・思想的なアプローチを学ぶ。編集プロダクション勤務を経て渡仏。パリで思索に耽る一方、アート、旅、歴史、語学を中心に書籍、雑誌の執筆・編集に携わる。パリのカルチエ散歩マガジン『pi´eton(ぴえとん)』主宰。

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