ウクライナは「信頼できないエネルギー経由国」「NATO加盟を歓迎しない国」 実はロシアに味方していたドイツ歴代政権の「地政学的悪夢」

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ウクライナ侵攻
2022年のロシアによるウクライナ侵攻。それはヨーロッパを戦争の世界に引きずり込んだ(写真:stoatphoto/PIXTA)
2016年のブレグジット、2022年のロシアによるウクライナ侵攻、さらにはトランプの2度にわたる大統領選勝利の原因は、実は同じものではないだろうか。「エネルギー、グローバル金融、民主主義」という3つの歴史から、政治経済構造の亀裂を分析した新刊『秩序崩壊 21世紀という困難な時代』(ヘレン・トンプソン著)が、このほど上梓された。同書に収録された「2022年以後――戦争」を転載する第1回。

クレムリンの動きに激怒したショルツ

2022年2月24日未明、ロシア軍がウクライナに侵攻した。その日のうちにロシア海軍はウクライナの黒海海域にあるズミイヌイ島を占領した。この一報が伝わると、原油価格とヨーロッパ向け天然ガス価格が急騰した。

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それはヨーロッパを戦争の世界に引きずり込んだ。ヨーロッパの平和を歴史的条件として再統一を果たしたドイツでは、すでに絶望的な数週間が過ぎていた。アメリカの諜報機関は2021年秋以降、ロシアの攻撃が近いと警告していたが、ドイツ政府は外交による解決という希望にしがみついていた。

2月7日、わずか8週間前に首相に就任したばかりのオラフ・ショルツはワシントンDCにいた。そこで彼は、ジョー・バイデンがはっきりとこう述べるのを聞いた。もしロシアが侵攻してきたら「われわれは(ノルドストリーム2を)終わらせる」と。

その1週間後、ショルツはキーウを訪れ、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領と会談し、分離独立を主張するドネツク、ルハンスク両地域について2015年に合意されたミンスク2和平協定(未履行)を受け入れるよう迫った。

翌日、ショルツはウラジーミル・プーチンと会談し、その直後に「平和のために働くなんぞ、われわれにとってクソみたいな義務だ」「ロシア抜きで永続的な安全保障なんて達成できない」とツイートした。そうしたことにはお構いなく、プーチンはドネツクとルハンスクを独立国家として承認した。

報道によると、クレムリンの動きに激怒したショルツは、ノルドストリーム2の稼働がドイツの天然ガス安全保障と両立するかどうかの再評価を行うよう要請した。

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