ウクライナは「信頼できないエネルギー経由国」「NATO加盟を歓迎しない国」 実はロシアに味方していたドイツ歴代政権の「地政学的悪夢」

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ロシアのウクライナ侵攻を境に、ドイツにとってのリスクは、まだ開通していない1本のパイプラインから、半世紀にわたって取り組んできたロシアとの融和(rapprochement)へと移った。

侵攻から72時間以内に、ショルツはドイツの兵器をウクライナに送ること、軍事費を引き上げるために1000億ユーロの基金を設立すること、さらに海上輸送される液化天然ガス(LNG)の受け入れによってロシアへのエネルギー依存を解消することなどを約束した。

ショルツはドイツ連邦議会で演説し、1975年の「ヘルシンキ最終法〔=ヘルシンキ合意〕以来およそ半世紀にわたって続いてきたヨーロッパの安全保障秩序がプーチンによって破壊されたのです」とし、これによってすべてが変わったと述べた。「私たちは時代の転換期(Zeitenwende)を生きています〔中略〕すなわち、これからの世界はもはやこれまでの世界とは同じではないということです」。

ヨーロッパの歴史が破壊された理由

ドイツの首相は部分的には正しかった。しかし同時に、2022年2月にヨーロッパの歴史が破壊された理由について述べたショルツの主張は歪んでいる。

自明のことではあるが、ロシアの〔対ウクライナ〕戦争以前のヨーロッパの安全保障秩序は、1970年代半ばのそれとは似ても似つかぬものであった。かつてソ連の西部であった場所に、新たに6つのヨーロッパの国が出現したのである。

平和な時代に独立した歴史を持たなかったウクライナが1991年にヨーロッパで最大の領土を持つ国家として登場したことは、特別な変化を意味した。新しく生まれた国民国家ウクライナは、地政学的に常に不安定な状態にあった。少なくとも2009年以降、プーチンは新生国家ウクライナが存在することの正当性を公然と否定していた。

1990年代にモスクワと結んだ条約で、ウクライナはクリミアにおけるロシアの軍事的権利を譲り受けた。

その後、2014年にウクライナはクリミア半島を失い、同国の南東部においてロシアに支援された分離独立派との戦争に突入した。

ロシアの侵攻が過去から現在を断ち切るものであったとすれば、その衝撃は、プーチンが独立国家としてのウクライナの存続可能性を破壊するために負わせようとした被害の激しさであり、それを増幅させたのは、キーウの権力を掌握しようとするプーチンの大それた野心と、それを成し遂げるにはまったく足りない軍事的動員との隔たりであった。

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