ウクライナは「信頼できないエネルギー経由国」「NATO加盟を歓迎しない国」 実はロシアに味方していたドイツ歴代政権の「地政学的悪夢」

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それにもかかわらず、供給上の制約から、ノルドストリームの爆発事故後もロシアとのエネルギー貿易は継続された。EUはロシア産ウランには制裁を科さず、モスクワもウラン輸出を禁止しなかった。

一方、出荷されたロシアの原油は、インドから石油精製品としてヨーロッパに到着した。フランスとスペインの需要に牽引され、2022年1~9月のロシアのヨーロッパ向けLNG輸出量は、前年同期比で40%以上増加した。その一部は、ノルドストリームの入り口地点に近いバルト海沿岸にあるロシアの新しいLNG港からのものである。

今も続く「スエズ危機」

ノルドストリーム・パイプラインの破壊がスエズ危機以後のエネルギー時代に終止符を打ったとしても、地政学的にはスエズ危機の影がまだ尾を引いていた。

当時、西ヨーロッパの指導者たちは、ソ連とアルジェリアを中東からの輸入に代わる原油供給源にできると考え、さらに原子力によるエネルギー革命によって、最終的には外国産原油への依存を完全になくすことができると期待していた。

ソ連とのエネルギー供給関係は、中東産原油の必要性を排除することなく成功したが、他の2つの野心〔すなわち、アルジェリアからの原油供給と原子力発電〕は、アルジェリアの独立、石油ナショナリズム、国外からのウラン調達の必要性など原子力発電のコストと限界を前に挫折した。

現在、ヨーロッパ各国政府は、1956年以降の唯一の成果〔すなわち、ソ連からのエネルギー供給〕に代わる短期的な対応策として炭化水素を模索する一方で、地域・国家レベルでのエネルギー自給という別のヴィジョンも追求している。いずれの場合も、アフリカ資源へのアクセスがきわめて重要となる。

しかしながら、アフリカ諸国自身が自国のエネルギー消費を拡大させたいと切望しており、ヨーロッパ諸国はアフリカの金属資源をめぐる中国との競争にも直面していることから、ただ資本と技術の提供だけでは、かつてソ連を相手にして成功したように、アフリカ諸国を振り向かせる決定的な誘因とはなりそうもない。

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