「不気味でキュート」日本製SFが外国人にウケた訳 「人と人以外の狭間」にある戸惑い描く2作品
『12ヶ月のカイ』を見てくださった観客からは、「こういう作品を観たことがなく、どう言語化すればいいかわからない」というご感想をいくつもいただきました。
この混乱や困惑がなければ、人はどこにも行けないような気もしています。
『12ヶ月のカイ』は、アメリカの映画祭で上演された際、ヒューマノイドのカイの存在について「クールで、キュートで、クリーピー(ぞっとする)」という言葉をいただきました。最高の誉め言葉だと受け取っています。
ロボット工学の世界には「不気味の谷」という現象があります。
ロボットの見た目が、現実の人間に近づいていくにつれて、人間は、そのロボットに対する親密度を高めていきます。ところが、あるポイントに達すると、その親密度が折れて、ガクッと「不気味の谷」へ落ちていく。人間に似たそのロボットを、不気味だと感じる臨界点があるのです。
どこまでを不気味と感じ、どこからまた「人間らしい」と思えるようになるのか。つまり、どんな存在なら「不気味の谷」を越えられるのか。そんなことも考えさせられました。
人間を人間たらしめるものとは?
『12ヶ月のカイ』では、ヒューマノイドのカイが人間のキョウカにクローゼットに押し込められて、「僕はキョウカの何なのか?」と思うシーンがあります。
ヒューマノイドですから、人間的な感情を出してはいけないのですが、カイを演じた工藤孝生さんは、セリフを言うにあたってどうしても感情を隠せず、チューニングが難しくてとても苦労されていました。
工藤さんにとって、ヒューマノイドとしてのお芝居は手探りとなり、どう演じればいいのか、戸惑いと混乱がずっとあったようです。しかし、自分の正解を探そうとするその姿が、カイがキョウカの幸せを実現するために、何か情報を求めているという設定とマッチしてもいました。
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