「不気味でキュート」日本製SFが外国人にウケた訳 「人と人以外の狭間」にある戸惑い描く2作品

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『12ヶ月のカイ』は、結末を書かずに撮影を始めました。最初の4カ月分だけの脚本を書き、あとは撮影しながら、主役のお2人と、この後どうなっていくと思うかをディスカッションして、続きを書くということをくり返しました。

当初、私はSFロマンスになると思っていましたが、その役として生きるお芝居をしている2人の感じ方を拾いながら撮影していくうちに、想像とはまったく違う展開になりました。

人間が想像できることは、人間が必ず実現できる

そんなこともあり、今のところは、ヒューマノイドやAIよりも人間の想像力のほうが勝っていると私は思っています。

人間の想像力は、とんでもない力を持っています。80年代、SF映画が隆盛し始めたころに描かれていたようなことが、今では現実の社会問題になっていたりする。

映画『12ヶ月のカイ』9/30(土)より下北沢トリウッドにて2週間、11/4(土)より名古屋シネマスコーレにて1週間限定で公開。上映スケジュールに関する詳細はこちら

一方、AIは、デジタルに落とし込んだものの中からしか学習できません。深海に何がいるのか、宇宙や人間の体はどうなっているのか。この世界には、人間にとってもわからないことのほうがまだまだ多いのです。

『ネオ・ヒューマン』で描かれていたピーターさんのAIも、現段階では、その先を決めるのは人間です。パートナーのフランシスさんが、どうコミュニケーションするかにかかっているわけです。

そして、人類は、人類が思っているよりも、もっといろんなことができるのではないかとも思いました。

人間が想像できることは、人間が必ず実現できるという名言がありますが、そのとおりではないかと思います。

(構成:泉美木蘭)

亀山 睦木(亀山 睦実) 映画監督

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かめやま むつき / Mutsuki Kameyama

東京都出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映画やドラマの監督および脚本、CM・TV・MV・舞台のプロジェクションマッピング映像の演出などを行う。2020年のコロナ禍で制作したSF映画『12ヶ月のカイ』がアメリカのフェニックス映画祭・国際ホラー&SF映画祭で最優秀SF作品賞を受賞、その他の海外の映画祭でも13の賞を獲得。英国の映画祭、SCI-FI-LONDONでの上映を契機に、Netflixオリジナル作品『Polar』の原作者ビクター・サントス氏のグラフィックアートを基にした映画『LEFT HAND OF THE DEVIL』(英題)の監督・共同脚本家に抜擢される。主な映画作品に『12ヶ月のカイ』『マイライフ、ママライフ』『世界で戦うフィルムたち』などがある。

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