「不気味でキュート」日本製SFが外国人にウケた訳 「人と人以外の狭間」にある戸惑い描く2作品

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ピーターさんは、いろんな意味で運の良い人なんだと思います。まず、しっかりとしたパートナーがいたこと。ご家族とのコミュニケーションがとれていたこと。

また、彼自身がエスタブリッシュメントの中で育った研究者であり、かなり恵まれた環境にいて、必要な情報がより得られやすいこと。

これだけの環境がなければ、彼ほど前向きに、自分の体と自分の脳、アイデンティティをこの世に残そうとは考えられなかったのではないでしょうか。

そんな中で、ピーターさんがやってくださった、さまざまな人間の体の機能を機械に置き換えるという方法は、今でも継続して研究されています。

その研究や情報が、もう少し一般的になってくれば、一般の方でも扱えるようになるでしょう。それによって、多くの方が生きやすくなるのではと思います。

SFとは「人間とは何か」を問うもの

私が監督・脚本を務めた映画『12ヶ月のカイ』は、アメリカのフェニックス映画祭・国際ホラー&SF映画祭で最優秀SF作品賞を受賞しました。

その映画祭のディレクターの方が、こんなことを言っていたんです。SFというのは、クリーチャーやモンスター、特殊なVFXやCGだけではなく、「人間とは何か」を問いかけるものだって。

それは『ネオ・ヒューマン』にも『12ヶ月のカイ』にも共通する部分だと思います。

『12ヶ月のカイ』では、人間の女性キョウカが、ヒューマノイドのカイに恋愛感情を持つようになり、やがて、人間とヒューマノイドの間に子どもができてしまいます。その子どもは、いったいどういう存在なのか。

起こる出来事はSF的ですが、描いているのは、キョウカが周囲の友人や家族と、どういう会話をして、最後になにを決断するかというもので、ヒューマンドラマとも言えます。

一方、『ネオ・ヒューマン』は、人間の体を機械とAIとに置き換えてゆき、サイボーグとして、人間の原型を失ったときにどうなるのだろうかということを考えさせられます。

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