AIが政治を主導?人間主体の世界が終わるとき 人間以上に優れた知能を人間は統制できるのか

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株式チャートとロボット
AIが人間よりもはるかに賢くなったとき、人間は政治や経済の主体であり続けることができるのだろうか(写真:aoo3771/PIXTA)
著しいペースで進化を遂げている人工知能(AI)だが、リスクが指摘されることも多い。今年5月には、対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を開発したアメリカのオープンAIの最高経営責任者(CEO)や研究者らが、「AIが人類を滅亡させるリスク」について声明を発表した。
AIが人間を破滅に追い込むリスクについて、「可能性は否定できない」と語るのは、人工知能を専門に研究する北海道大学客員教授の小川和也氏だ。小川氏は著書『人類滅亡2つのシナリオ AIと遺伝子操作が悪用された未来』で、AIが正しく取り扱われなかった場合の“想定しうる最悪なシナリオ”を示している。同書より、一部抜粋・再構成して紹介する。

ツールの域を超えるAI―主体性を獲得したとき

「生成系AIはインターネットやスマートフォンレベルのインパクトだ」という声をよく聞く。コンピュータネットワークであるインターネットは、1990年代後半から世界中で使われるようになり、電子メールやWebサイトという新たな情報とコミュニケーション手段の基盤となった。日常生活から仕事まで、もはや欠かせない社会的インフラとなり世界を変えた。

2007年に発表された初代iPhone以降のスマートフォンは、世界中の個人が24時間365日絶えずコンピュータネットワークの参加者になることを可能にし、インターネット時代を加速させた手のひら上のコンピュータだ。

これらについては説明不要なほど、すでに人類の実感レベルで世界を一新した。間違いなく歴史的転換点を作った発明であり、異論を挟む余地はないだろう。

一方、生成系AI以降の人工知能は、これらと同等のインパクトだと捉えてよいのだろうか。インターネットやスマートフォンが生活や仕事を激変させたように、人工知能も大きなインパクトをわれわれにもたらす点については間違いないが、その性質上、同等・同質とみなすことには違和感がある。AIはいずれ、単なるツールに収まらなくなる可能性が高いためだ。

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