人類は「理想の子ども」を作る誘惑に勝てるのか 現生人類はポストヒューマンに淘汰される?
生物の遺伝情報を狙いに応じて書き換える「ゲノム編集技術」が、目覚ましいスピードで進化を遂げている。医療分野などでの活用に大きな期待が寄せられている一方で、倫理的な課題も数多い。
北海道大学客員教授の小川和也氏は、著書『人類滅亡2つのシナリオ AIと遺伝子操作が悪用された未来』の中で、ゲノム編集技術を使ってデザイナーベビーが量産されるリスクについて警鐘を鳴らしている。技術が正しく扱われなかった場合、人類が直面しうる「最悪な末路」とは。同書から一部抜粋・再構成して紹介する。
デザイナーベビーを100%生み出さない世界は実現できるのか
2030年代以降、ゲノムテクノロジーは、人類や動物の生命を自在に操ることを可能にし、技術的成長は加速度的にその先を目指す。ゲノム編集によって肉体的に操作され、個性や外観を変えられたデザイナーベビーも、全人類が完全に足並みをそろえて止めない限り、どこかで誰かが、さまざまな目的で生み出すことになる。人類の欲望が技術を暴走させれば、デザイナーベビーは人類の優劣を際立たせ、分断と紛争の火種になる。
2013年、アメリカの個人向け遺伝子解析企業「23andMe」が、両親の唾液などから望み通りの子どもが生まれる確度を予測するシステムの特許を取得したことは、それまでSFの世界だったデザイナーベビーが、現実の世界で強く意識されるきっかけになった。
この技術は遺伝子自体をデザインするものではなかったが、2015年発表のゲノム編集技術による世界初のヒト受精卵の遺伝子操作を行った中国の研究が世界に衝撃を与え、2018年には中国の研究者がゲノム編集技術を用いて双子を誕生させたことで議論を呼んだ。
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