AIが政治を主導?人間主体の世界が終わるとき 人間以上に優れた知能を人間は統制できるのか

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人工知能の政治活用に対してよく課題視されるのは、インターネット上の情報からバイアスを持ってしまうことや、「公開されていない情報」もしくは「混沌としていて不明瞭な情報」をカバーできないことだ。これについては、データ漏洩やサイバーセキュリティリスクに配慮しながら、当初は人間が不完全な部分や議論の余地を補いながら学習させていく。政策や外交判断において、政治家がより公正で的確な意思決定を行うためのアシスタントとして効果的に活用する。

だが、汎用人工知能、人工超知能のレベルになってくると、学習と自己改善能力、創造力が高まり、いまは苦手とされる無から有を生み出すスキルも磨かれていく。そうなると、人工知能の元来の優れたデータ分析力、積み上げた政治の専門的知識を駆使して最適な政策を考えて決定するほうが市民に必要で、優先度の高い政策を導き出せる可能性が増す。

人間よりも情報量が多く、少数派の民意も漏らさずに視野も広い。自己を優先する主張や非倫理的な言動もせず、汚職とも無縁。スタミナにも限界がないため休むことなく、刻々と変わる複雑な社会の問題に迅速に対応し、客観視が担保された合理的で公正な政治を行う。手遅れにならないよう、高速で分析や戦略立案、改善を重ねる。

選挙においても、レベルに磨きをかけた生成系AIが投票判断に必要なコンテンツを素早く提供し、投票に必要な情報を網羅してわかりやすく有権者に伝え、政策だけではなくさまざまな価値観から投票の意思決定をできる環境が整う。

浸食される「知能」、揺らぐ人間の存在意義

どのような社会を作りたいかについては人間が考え、人工知能にリクエストして提案してもらうところから始めたとしても、超知能に達した人工知能は、人間のリクエストよりも優れた社会を考案できるようになっている可能性もある。人間のエゴを満たす方向に寄らず、地球の環境に寄り添った「地球ファースト」の政策を推進するかもしれない。

人工知能による政治の有用性が世間に理解され、さらに知能が磨き上げられ経験値を積むことで、将来的には人間の政治家がいなくなる国や地域が現れる可能性も否定できない。

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政治と同じく、企業経営などの経済活動も複雑な要素が絡み合っているため、現状レベルの人工知能であれば、売り上げ予測、生産計画、仕入れと在庫管理、人事管理など、部分的な支援に活用範囲はとどまる。しかし、超知能化した人工知能が政治を担える能力は、経済活動においても発揮できる。経済、経営活動において、人工知能の高度なデータ分析や因果関係の推論、各種判断で人間よりも勝る現象が目立つようになったときに、人間が「リーダーシップ」「創造力」などを売りにしたとしても、人工知能を活かさないほうが不利になる。

政治や経済活動にまつわる仕事が人工知能に100%置き換わるわけではなかったとしても、極めて重要な業務遂行において、人間をはるかに上回る能力で成果を出すようになったとすれば、補助的な活用であったつもりが、人間の存在感を侵食しかねない。しかも、侵食するのは「知能」の領域である。「知能」が人工知能に侵食されれば、人間の存在意義は揺らぎ、重要な判断を下す主が人間から人工知能へと移行する可能性も十分に考えられる。政治や経済を人工知能が主導すれば、人間が統治する世界は終末となる。

小川 和也 北海道大学産学・地域協働推進機構客員教授/グランドデザイン株式会社CEO

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おがわ・かずや / Kazuya Ogawa

専門は人工知能を用いた社会システムデザイン。人工知能関連特許多数。テクノロジーを基点に未来のあり方を提唱するフューチャリストとして、ラジオや出版など各方面で言論活動も行う。著書『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)は教科書や入試問題に数多く採用され、テクノロジー教育を担っている。

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