「アスリート1000人のウンチ」解析で際立った特徴 サッカー元日本代表・鈴木啓太氏が腸内研究の道へ
浦和レッズ在籍時も、チームメイトに伝えることはなかったといい、「お腹にお灸をしたりしていたので、『啓太さん、お灸臭いっすよ』なんてよく言われていましたね」と笑う。
あくまで自分のため――。だが、その心境に変化が訪れる。
「2013年か2014年の頃だったと思います。サポーターと話す機会があったのですが、『もっとスタジアムに観に来てください』と伝えると、『Jリーグが始まって、もう20年以上経っている。当初40歳だった俺は今60歳を超えているんだ。スタジアムへ行くのも大変だし、身体も疲れるんだ』と言われて、ハッとしたんですね。プレーを見せることだけがアスリートの役割ではなく、見に来てくれるサポーターや、地域の皆さんの健康の役に立つことはできないかと考えるようになったんです」
健康である時間が延びれば、その分、自分の好きなことに費やす時間も増える。スタジアムに足を運ぶサポーターも増えるかもしれない。大観衆に囲まれながらプレーをすることは、選手にとってもやりがいになる。
腸内環境に目をつける
かつて、オシムジャパンで“水を運ぶ人”(献身的にプレーする選手)と呼ばれた鈴木さんは、ボールをつなぐために汗をかく役割から、健康をつなぐために汗をかくことを決意する。
目を付けたのが、一日の長がある腸内環境だった。
「サッカー選手に何ができるんだ。マネタイズなんてできないと揶揄されたこともあった」が、鈴木さんは引退する前年の2015年、アスリートの腸を研究する「AuB」を設立する。
「ちょうど”デブ菌”、”痩せ菌”の発見が世間で話題になり始めていたようなタイミングでもあったので、腸内細菌の研究分野は伸びしろがあると思いました。しかし、何から手を付けていいかわからない。話を聞くと、特徴的な被験者で調べることが、大きな発見につながりやすいと。そこで、腸内細菌を調べるために、アスリートに絞ってうんちを集めることにしました。『どれくらい集めたらいいのか?』と研究者に尋ねると、『1000検体は必要だ』と。必死に集めました」
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