健康の人から「便を移植する」と体に何が起るのか 腸内の悪い菌と戦う「IgA抗体」って何?

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
他人の便を移植することで健康になるだけでなく、性格まで変わるといいます(写真:metamorworks/PIXTA)
最先端の理系分野で活躍する10人の東大教授が、ビジネスやIT、国家、AIなど多岐にわたるトークテーマを繰り広げる『東大教授が語り合う10の未来予測』。その中から本記事では、新藏礼子教授(生命科学が専門)を中心に、腸内環境改善のカギを握るという「IgA抗体」について語り合う。腸内の“悪い菌”を退治するというIgA抗体はどうしたら増やすことができるのか。

腸の中にはさまざまな細菌がいる

瀧口友里奈(以下、瀧口):最近は「腸活」という言葉が流行っているように、腸内環境への関心はすごく高まっていると思います。でも、IgA抗体というのはあまり一般的な用語ではないですよね。

新藏礼子(以下、新藏):まだ全然メジャーではありません。私たちの体には、自分で自分を守る調節機能があります。それを「恒常性維持(ホメオスタシス)」と言いますが、恒常性維持が乱れてどこかに皺寄せが来たときに病気になると私は捉えています。そして認知症・がん・心血管疾患などさまざまな病気に、腸内細菌の異常が関わっているといわれています。

私たちのお腹の中には、A細菌、B細菌、C細菌……とさまざまな腸内細菌が生き物として住み続けています。口から食べたものが腸に届くと、そのA細菌、B細菌、C細菌がそれぞれ違うものに変えます。その細菌が変えたものを消化して、腸から取り込みます。ですから、私たちに重要な作用を及ぼしているのは、腸内細菌なわけです。

私たちのお腹の中は、酸素がほとんどない低酸素環境です。ですから、腸内細菌はうんちになって外に出てきた瞬間に酸素によって死んでしまいます。そのため、これまで腸内細菌の研究はなかなか進みませんでした。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事