健康の人から「便を移植する」と体に何が起るのか 腸内の悪い菌と戦う「IgA抗体」って何?
でも、次世代シークエンサーなどができたおかげで、腸内細胞の遺伝子を読むことができるようになり、「今、腸にどんな細菌がいるのか」「どんな代謝酵素を持っているのか」がわかるようになったんです。
また、遺伝子だけでなく、腸の中の代謝物を網羅的に解析する「メタボローム解析」の技術も進み、例えば「ある腸内細菌由来の代謝物を体の中に取り込むとリウマチになりやすい」とか、いろんなことがわかってきました。じゃあ、それがわかったらどう治療すればいいかというと、腸内細菌を変えればいいということになるわけです。
健康な人からうんちをもらう「便移植」
瀧口:すごく基本的な質問をしてもいいですか。腸内細菌って、よく耳にする「善玉菌」とか「悪玉菌」などのことだと思うのですが、「いい代謝物を作るのが善玉菌、悪い代謝物を作るのが悪玉菌」という理解で合っていますか。
新藏:はい。ただ、科学的な決まりはまだないんです。「この病気になる人は、この細菌が増えている」とか「この病気になる人は、この細菌が作る代謝物が増えている」といったことが少しずつわかっているという段階です。
だから、「いい代謝物を飲もう」「悪い代謝物だけを腸から取り除こう」といったことをいろいろと試しています。あと、聞いたことがあるかもしれませんが「便移植」という方法もあります。健康な人のうんちをもらってきて、それを飲むとか。
瀧口:便を移植するということですか。
新藏:はい。その便の中にはきっといい腸内細菌がいるので、それをそのまま移植するという方法です。腸の中は限られたスペースで、限られた栄養しかないので、それぞれの菌が陣地を取り合っている状態です。ですから、自分のお腹の中にいい菌がいっぱい住んでいる人は、外から悪い病原菌が入ってきても、いい菌がやっつけてくれて病気にならない。
反対に悪い菌が多い人にいくらいい菌を入れても、排除されてしまいます。そこで、私はIgA抗体で悪い菌を減らして陣地を作って、その後にいい菌を補充するというアプローチを目指しています。