「アスリート1000人のウンチ」解析で際立った特徴 サッカー元日本代表・鈴木啓太氏が腸内研究の道へ
こうした食事管理に、人一倍配慮しているのがアスリートだろう。特徴的な被験者であるアスリートの便を分析し続けた結果、次のようなことも判明した。
「アスリートと一般の方の腸内環境を比較したときに、アスリートは酪酸菌(らくさんきん)の数が、平均して2倍ほど多いことがわかりました。酪酸菌は、500~1000種類いる腸内細菌の中で、一般の人でも全体の2~5%ほどを占めるマジョリティな菌です。
ところが、アスリートは平均で5~10%ほどを占めていることがわかった。そして酪酸菌は、短鎖脂肪酸という有機酸を作り出すのですが、この短鎖脂肪酸は持久力や疲労回復にかかわることがわかっています。便を調べるとさまざまなことがわかってくるんですね。必ず役に立つものですから、ヒトの便は“茶色いダイヤ”なんですよ」
競技ごとに腸内環境の特徴が異なる
どうしてアスリートは、私たちより体を動かすことができ、疲れ知らずなのか? 絶え間ない日ごろの練習もあるだろうが、腸内環境がもたらす好循環もあるのではないか――。こうした疑問に答えるべく、AuBは香川大学などとタッグを組み、共同研究に取り組んでいるという。驚くことに、腸内細菌の種類や数、構成データを学習するAIシステムまで開発した。
「アスリートの腸内環境の解析データをAIに読み込ませると、サッカー選手か否かを85%の確率で見分けられます。ラグビー選手か否かも80%の割合で判別できます。つまり、競技ごとに腸内環境の特徴が異なるんですね」
現在、アスリートの便検体数は1000人2200検体を突破。次なるステップは、腸内環境の“見える化”だと、鈴木さんは意気込む。
「個人の便を解析し、腸内環境の種類(酪酸菌やビフィズス菌などの割合)などをレポートにまとめる『BENTRE』というサービスを開始しました。自分の腸内環境を数値化することができれば、どういったものを摂取すればいいか、よりわかりやすくなる。『体にいいから』『体に良さそう』――、漠然とした理由から栄養を摂取するのではなく、腸内環境学という視点で自分の体と向き合える仕組みを作れれば。僕たちは、エビデンスをもとに、皆さんの健康に寄与していきたい」
ピッチの上からは退いた。だが、冷静な分析力と妥協なき情熱は、今なお衰えることなく、異なるフィールドで発揮されている。
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