「アスリート1000人のウンチ」解析で際立った特徴 サッカー元日本代表・鈴木啓太氏が腸内研究の道へ
そうは言っても、今のように「腸活」が叫ばれていない時代である。「研究のためにうんちをください」と伝えても、「わかりました」と二つ返事でうんちを提供するアスリートは多くはなかった。
「僕は天邪鬼なので、最初からチームメイトである浦和レッズの選手たちに声を掛けることはしたくなかった」と語るように、あえてイバラの“うんち頂戴”の道を選んだというから、現役時代さながらの妥協しない姿勢は健在のようだ。
記念すべき第1号は、親交のあるラグビー選手、松島幸太朗選手だったという。
「食事をしていたときに、うんちをくれないかと相談しました。いきなりうんちを頂戴と言われたわけですから、彼も引いてましたよね(笑)。でも、意図を伝えると理解してくれました。もちろん、研究結果は提供してくれたアスリートにフィードバックします」
学会でエビデンスを発表
アスリートの腸内データが、誰かの健康の役に立つ――。その思いに共鳴するように、次第にうんちは集まり出す。
2018年には、国内最大級のバイオ系学会である日本農芸化学会で「アスリートと一般人の腸内環境の違い」を発表。目標だった1000検体(アスリート500人/27競技)を達成し、エンジェル投資家から6400万円の資金調達にも成功した。だが、「納得できるデータを得るまで商品化はしないと決めていました」と語るように、エビデンスを追い続けた。
「2019年が一番苦しかったです(苦笑)。資金も底を尽きかけていました。会社が潰れれば、好意で提供してもらった便検体の行き場も失う。妥協して商品を開発すべきか葛藤していた」
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