人生100年時代を生き抜く教育の「2大キーワード」 「アンラーン」と「デマンドサイド」の重要性

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「アンラーン」に求められるのは、立場や年齢を超えて、互いが対等であるという感覚です。たとえば今、時代を動かしているのは霞が関ではなく、今までなかった財やサービスといった新しい価値を生み出しているアントレプレナーたちです。

私自身、自分の名前でリスクを負って、自分のアイデアで戦っている彼ら・彼女らがどんな学びをしているのか、どんな本を読み、どんな人と対話を重ねているのかといったことに大変関心があります。私にとってSNSはそうした知りたい情報を把握する、私のためにカスタマイズされたニュースサイトです。

人生100年時代になっているにもかかわらず、高校受験の15歳、大学受験の18歳、社会人になる22歳という共通のハードルを設けて同世代と徹底的に競わせ、入社後も「同期」でくくられて仕事に追い立てられるなかで、そのハードルを乗り越えられないと敗者だという意識を持ってしまう。

それでいて少子化対策として結婚や出産を支援しますよと言われても、今の若者の言葉で言えば「無理ゲー」ですし、この日本発の教育・雇用に関するアジアモデルが、世界のなかで日本のみならず韓国や中国など東アジア諸国の出生率の低下が著しい背景になっているとの山崎史郎内閣官房参与の指摘は重く受け止める必要があると思います。学校でも職場でも同一年齢で一斉に競争に追い立てられる仕組みの転換が必要です。

いくつになっても、どんな立場でも、学ぶ意欲を持ってチャレンジできる人がワクワクできる。そんな土台を個人に対しても社会に対しても提供するのが学校教育の役割です。まず、学校で子どもたちと向き合っている教師などの大人が「アンラーン」の発想で変わっていく必要があるのではないでしょうか。

2つ目のキーワード「デマンドサイド」

同時に大切なのは、デマンドサイドの視点です。日本の学校制度がスタートし動き続けて151年。明治5年の学制により、それまで寺子屋と藩校しかなかった日本社会は大きく変容しました。

子供たちは学校という近代システムのなかで、村唯一のホワイトカラーである教師から教科書や教材を使って学ぶ。記憶力と根気があることを学びの過程で示すことができたら、親の職業とは異なる人生に踏み出すことができるというワクワク感で、学校は輝いていたと思います。

だからこそ、今に至るまで日本の教育についての法令は、子供たちの学びを学校という組織、いわばサプライサイドに着目して規定していますし、その結果、学校制度は標準化されたシステムとして機能してきました。

しかしデジタル化は、それを反転させています。わかりやすく言えばテレビのようなもので、あらかじめ放映される番組が決まっていてそれをパッシブに視聴するというのが今の学校のイメージでしょう。しかし、デジタル化によりNetflixのように自分が見たい番組をアクティブに選択できるようになっている。デジタル化に伴う変化は、教育の世界にも起きつつあります。

生成AIの飛躍的進化のなかで、情報を検証し、問を立てる力、身体性に基づく思考や対話のなかから知性を見いだす力がますます重要になっていますね。また、次代を切り拓くイノベーションの芽は、その子ども固有の関心やひらめきにあります。

そのため、子どもたちが自ら問題意識をもって知識を理解したり思考したりすることが大切で、Netflixのような個別性の高い教育の実現が不可欠となっています。他方、自他の違いを尊重し多様な他者と共生する作法としての基礎学力を身につけることは、個人の自立やデモクラシーの基盤です。

個別性と共通性という板挟みのなかで、デジタルを生かして両者が両立する学びへと転換することが可能となっており、そのために、現在の学校制度や教育課程、入試、教員の免許制度や処遇、指導体制などを一体的に再構築することが必要になっていると思います。

このような学びの転換のなかで、子供たちと向き合っている大人には何ができるか。子供たちは一人ひとり特性があります。「聞く・話す・読む・書く」のそれぞれで得意な子もいれば、そうでない子もいる。言葉ではなく、音やダンスなどによる表現が得意な子もいますね。怠りなく準備して成績がよく、先生に褒められる子もいれば、私のように好きなことに熱中して他の教科はあまりやらず、先生を困らせる子もいるでしょう。

子供たちの関心の向かう先はさまざまですし、学びの扉が開く瞬間もさまざま。だからこそ、子供たちに好きを諦めさせて嫌いを強い、総得点を上げるというゲームからの転換が必要です。大人には、子供の特性や関心を引き出す知性や感性が求められているのではないでしょうか。

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