人生100年時代を生き抜く教育の「2大キーワード」 「アンラーン」と「デマンドサイド」の重要性

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同時に、コロナパンデミックを経て、学びのあり方は多様なのだと多くの人が実感しました。明治5年の学制発布以来、子供たちは8時半になったら全員教室に集まることが当たり前でしたが、コロナパンデミックはそのことが決して当たり前ではないことを教えてくれました。

四角い教室で授業を受けることだけが学びではなく、オンラインでの学びを含めた「重層的な教室」がありえるということが広く社会で共有されたのだと思います。子供たちが毎日決まった時間に全員集まるのが当たり前でない以上、多くの学校において、子供たちがみんなで集まりリアルで対面できる貴重な機会を生かしてどんな学びを行うのかを構想するようになりました。カリキュラム・マネジメントの重要なポイントです。

一斉授業だけではなく、対話や協働を重ね探究活動を行うといったリアルに対面することにより成立する教育活動に目を向けるようになりました。

これからは、そうした多様な学びをどのように組み立てていくかを、より自覚的に行っていく必要があるでしょう。

一人一台の情報端末を提供する「GIGAスクール構想」は、子供たち一人ひとりの特性や関心に応じた学びを可能にすることが目的です。子供たちが自らの学びを調整し組み立てていくツールとして情報端末が共有されたことの意義は大きいと考えています。

1つ目のキーワード「アンラーン」

ライフ・シフトというと、転職しなければならないのか、起業すべきなのかと構えてしまう人もいるかもしれません。私自身、1992年に旧文部省に入ってから31年間、ずっと典型的な公務員でしたから、ライフ・シフトの観点から言えば褒められた人生ではないかもしれません。ただ振り返ってみれば、異動そのものが「転職」のような要素を持っていたと感じています。

入省以来、大学政策に20年、初等中等教育に関する仕事に10年携わってきました。2017年に内閣官房人生100年時代構想推進室の内閣参事官として、ライフ・シフトの土台として、年金、医療、介護、少子化施策に充てると消費税法に明記している消費税の増収分を、少子化施策の一環として高等教育の費用負担の軽減(授業料減免、給付型奨学金)に充てるというプロジェクトに参画いたしました。

これまで消費税の税収入を高等教育の費用負担の軽減に充てるという発想は霞が関にはなかったので、画期的な転換だったと思います。

その後、初等中等教育局財務課長として全国の小・中学校の教師の定数や配置、給与や働き方改革を担当しておりましたが、異動により内閣府において10兆円大学ファンドを担当することになりました。

農林中金や日銀といった金融のプロの方々と協働しながら、財政投融資資金を活用して10兆円のファンドを組成し、長期分散投資による収益を研究大学支援に投じるという仕事で、これも前代未聞のプロジェクトです。未知の世界での学びや発見が大いにありました。日本の官公庁や企業は非常に間口が広い。こうした異動も一つのライフ・シフトと言えるのではないでしょうか。

大事なのは、そうした環境の変化を生かす方向で、自分の人生を組み立てていくという発想です。そのためのキーワードは、「アンラーン(unlearn)」だと思います。

今まで積み上げてきた知識や経験が無駄だとか否定するのではありません。新たなステージに入ったからにはこれまでの知識や経験や思考の枠組みはひとまず脇に置いて、一から学び直してみるということです。

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